04/26・ソラクに果つ

その1〜雪岳洞から飛仙台


昨年の11月に続いての海外遠征第二弾!
向かった先はお隣の韓国。ソウルから東北方向へおよそ150kmほどの位置にある雪岳山(ソラクサン)。但し、雪岳山という名の付いたピークは無く、この山域の総称が雪岳山。一帯は国立公園になっている。目指すのはこの山域で最も高いピークである大青峰(デチョンボン・1,707.9m)。

事前の調査で、この山域にはいろんなコースがあることがわかっている。いずれも雄大なロングコースで、大青峰のピークを踏むには日帰りはなかなかきつそう。しかし、後の日程の都合もあり、おおよそ11時間の日帰り強行コースにすることにした。
宿泊場所の束草(ソクチョ)市雪岳洞(ソラクトン)を明け方に出てピークを目指し、夕方に西側の麓にある五色(オセッ)にゴールするコース。全長約17キロ。
日ごろ親しんでいるコースの倍以上の時間と距離、そして高度差があるこのコース、正直言って「大丈夫かなぁ」って心配していた。
もう一つの心配は食事。水はペットボトルを事前に準備しておけば大丈夫だけど、宿舎がある雪岳洞A地区にコンビニがあり、24時間いつでも気軽にオムスビやサンドウィッチが買えるのかどうかはわからない。日本を発つ前にえエネルギーゼリーを4つ、カロリーメイトのビスケットタイプを1箱、高カロリーバナナクッキーを1箱を用意した。あと、現地でカップ麺とバナナ、水を1.5リットルを買い足す予定を立てた。

事前に、ソウルにある韓国観光公社の本部でソラクサン周辺の登山地図(「案内地図 魅力の街 束草 雪岳」発行束草市)を貰ってある(この地図は比較的どこでも無料で入手可能なようだ。観光公社以外にも襄陽(ヤンヤン)空港の到着ロビーにある観光案内所や束草市内の登山用具販売店、観光スポット、ホテル、みやげ物屋などに置いてある)。日本国内で入手することは難しいかもしれないので、どうしても事前に欲しい場合は日本国内にある韓国観光公社に相談してください。
地図上にコースタイムが印刷してあるけれど、この時間をどれだけ信用していいのかわからないので、それも不安。また、いつもは25,000分の1の地図を使っているが、この地図の縮尺は50,000分の1なのもちょっと気になる。何しろケンチャナなお国柄の国やからなぁ。
でも、何種類かソラクサンの地図をあたったけど、この地図が一番詳しくて使いやすそうに見えた。


関空から仁川(インチョン)国際空港に着き、金浦(キンポ)空港にバスで移動、国内線で襄陽へ向かう。
仁川はそうでもなかったけど、日本海側の各地は悪天のようで、木浦(モッポ)、麗水(ヨス)、大邸(テグ)、浦項(ポハン)、蔚山(ウルサン)への便はゾクゾクと「Cancel」の表示が点滅している。ボクが向かう襄陽便は「Hold」。すなわち「天候調査中」。
14:30発なのに、14:00を過ぎても電光掲示板の表示は変わらない。イライラすると言うよりも、諦めムード。飛ばなかったら雪岳山の山歩きは諦めて、ソウルへ行こうと決めた。
そうしたら14:05になって、ようやく「process」表示が変わり登場手続きが始まった。ほっとする。
突風が吹き荒れ土砂降りの襄陽空港に着陸。明日の天気予報は「晴れ」だけど、ちょっと信じられない。新しい空港はガランとしていて淋しい限り。
が、迎えに来てくれているはずの人の姿が無い。「あれ?」。いくら待っても来ないので、空港内の観光案内所の方に相談する。係の方が先方に電話で確認してくれ、手違いで迎えに来るのを忘れていたらしいことが判明。仕方が無いので、手持ち無沙汰に待っている他のホテル送迎バスがボクを雪岳洞のホテルまで送ってくれることになった(ありがとうございました!)。

宿舎に荷物を置き、束草の街までホテルの人に教えてもらった登山道具屋にガスボンベを買いに行く。
この店は束草の市内にあり、店主は日本の北アルプスにを歩いたことがあるという方で、ほんの片言程度日本語が話せる、30後半くらいの気のいいおじさん。この時もコースの説明をしてくれ、明日の天気予報をwebで調べてくれた。スーパーにも寄って、水とカップ麺も仕入れた。ただ、バナナは20本もついているような大きな房のものしか売っていないので諦めることにした。軽く食事をして、宿に戻る。
この晩は明日に備えてそうそうに寝ることにした。まぁ、明日に備えなくても早く寝るんだけどね。



宿舎の前から見上げる外雪岳の壁

4:30に起床。ちょっと興奮していたのか、目覚ましのベルが鳴る前に自然に目が覚めた。
薄いカーテン越しに見える空はまだ薄暗い。それでも窓に寄って外を眺めると、快晴を予感させる夜明け前の空の色だ。昨夜はあんなに降っていたのに、天気予報も当たるんだなぁ。
着替えて手早く装備を整える。宿舎の玄関を出たのは5:00ごろ、準備体操で身体をほぐしてから歩き出す。気温計を見ると5度を指している。

道路沿いにはあちこちに砂が残り、前夜までの雨の激しさを物語っている。道路と平行して流れる川はもの凄い速さで轟音をたてて流れていく。なかなかの迫力。
ほどなく何軒かの土産物屋が軒を並べ、公園への入口(雪岳洞ゲート)だ。事前の情報だとここで「入山料(W2,800)」を支払うことになっているのだけど、窓口には誰もおらずゲートも開いているので素通りする。そりゃそうだ、こんな早くに誰が山へ向かうんだ。もうすっかり薄暮の時間帯は過ぎ、見上げれば濃い紫色をした青空が広がっている。間違いなく今日はいい天気になる!
眼前には雪岳山の前衛山がそびえ立ち、激しく起立した岩肌が迫っている。日が当たらない北側の山肌には4月も終わりだというのに雪渓が残っているのが目に入る。しまったなぁ、軽アイゼンは必要ないと思って宿に置いてきてしまった。
ゲートをくぐるとほどなく林の中に入り、自然観察公園のような小径となる。道はよく整備されているうえに、左右にはこの林に自生する植物や動物を案内する立派な表示板が幾つも設置されている。平行する川の流れは相変わらずの迫力が続く。
途中、食堂を兼ねた物品販売店を通り過ぎ、橋を一つ渡ると林間コースは終わり、コースはぐっと狭まくなり、深くえぐられたV字谷の渓谷への入口に達したことがわかる。小鳥たちのさえずりも流れの轟音でかき消されてしまう。
今度は、鉄パイプで組まれた橋を恐る恐る渡る。ここは一番最初の鉄パイプだけに恐る恐るだったけど、ここ以降オレンジ色に塗られたこの鉄パイプの橋と手摺りには最後までお世話になることになる。

これが朱塗りの鉄パイプで組まれた橋 豪快に流れる沢

しばらく川沿いの道を進むと、最後の食堂兼売店兼展望台。ここが「飛仙台・ピソンデ」。巨大な一枚岩の上を水流が一気に流れ落ちる景観は見事としか言いようがない。どうやらこの山域は花崗岩を主な主成分にしているようだ。
この飛仙台までは何の装備も必要なく、散歩気分で歩くことが可能。雪岳山はこの他にも本格的な装備を必要としない散策コースが幾つも用意されているので、気軽に韓国の山の気分を味わうことができます。

すっかり明けた朝の雪岳山は気持ちがいい。
展望台を過ぎると、また鉄パイプの橋が連続してあり、この橋を渡りきるともう一つのゲートがある。ここは分岐点になっている、左へ進むと「千仏洞渓谷」を経て大青峰へ、右だと1,300mほどの摩登山へ。
予定では、左へ進むわけだが、このゲートには大きな横断幕が貼られている。黄色地に赤い文字。どうやら推測するにこの横断幕には「3月1日から5月31日まで 山火事注意」と書かれているような気がする。深く考えることもなく幾分水量が減った千仏洞渓谷へ渡る鉄パイプの橋を歩き始めた...。

男性的なV字谷、飛仙台の手前

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