「病としての韓国ナショナリズム」

伊東 順子 洋泉社新書 740円


  

韓国で生活をしていた日本人のジャーナリストが、韓国のナショナリズムについて書いている。
何も新書だからと言ってビビる必要は無く、すらっと読み通すことが出来る。この本に書いてあることが、全て本質を突いているとは思わないが、なかなか興味深く読ませてもらった。
ここで展開される論旨は、いわゆる「嫌韓論」ではない。この筆者が韓国に対して愛情に近い感情を持って接していることは、充分行間から読み取ることが出来る。だからこそ説得力のある論旨が展開されているのだと感じた。

韓国が抱えている一番大きな問題は、「朝鮮は世界でも類を見ない“単一民族国家”」という強烈な誇りを持っているにも関わらず、今や地球上で唯一残された「民族分断国家」であるという悲劇を甘受しなければならないところだ、と筆者は指摘している。
つまり、韓国の国民は「韓民族は世界に誇る優秀な民族である」という強烈な民族主義を掲げているのだが、一方その「優秀な韓民族」が作ったもう一方の国・北朝鮮を徹底的に否定しなければならないという相反する命題に苦しんでいると言うのだ(ごもっとも)。
すなわち、民族としての優位性をうたうよりも、自由主義国家である大韓民国が国家として優れているという国家ナショナリズムを声を大きくして唱えなければならない危うさを指摘しているのだ。

韓国という国とか、韓国の人に興味をお持ちの方にはなかなかためになる本だと思います。まずまずのオススメです。
ジュンク堂大阪本店の新書コーナーで、他の本を探しているときに目に付いて買ってしまいました。
2001年10月に発行され、新書としては異例の売れ行きを示し、ベストセラー・ランキングにも登場していたとは、読了後に知りました。

おしまい。