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痩尾根の途中から振り返る観音峰 |
3月に入ってから何とかこなした即席の足馴しも無事完了して、久し振りに韓国遠征。
「どこかいいコースはないかな」といろいろ調べた結果、忠清南道・大田広域市の近くにある鶏龍山(ケリョンサン)が手頃で良かろうとなりました。高さは850mほど。
例によって鶏龍山というピークは無く、15ほどのピークを持つ山の連なりを総称して鶏龍山と呼ぶようです。最高峰の845mのピークは入山規制されており、歩けない。歩ける範囲で最も高いのが観音峰(カンルンボン・820m)。従って、ここを目指すことになります。
訪韓そのものを急に決めたこともあって、事前にはあまり調査が行き届いていない。まぁ、それはいつものことで、出たとこ勝負。
それでも、以前の雪嶽山(ソラクサン)のツライ思い出が頭をよぎるので、前日の夕方、大田に着いた足で大田駅の観光案内所へ向かい、入山規制がされていないか確認。対応してくださったカウンターの方がわざわざ国立公園の事務所に電話で問い合わせてくださり「OKですよ」と教えていただいた(ありがとうございます)。
山行以降の予定が立て込んでいることもあって、早朝スタート。コースはざっと下調べをしてある。具体的には、体調と時間とを相談しながらと思っていたのに、いきなり寝坊。
何でかな。前夜は、誘われたノレバン(カラオケボックス)も辞退して早寝したのに(もっとも、ノレバンは苦手なんですけどね)。
一度、4時に目覚めて「しめしめ」と思っていたのに!
それでも、前夜のうちに準備をしているので、素早く旅館を飛び出す。旅館の横にあるLG25(韓国のコンビニです)でサンドウィッチと水を買って、通りかかったタクシーを止める。寝坊した分を取り返さないと!
6時少し前。もうすっかり明けていて、夜明けの茜色は残っていない。いやいや、日頃の行いが良いのか透き通った青空が広がっている。これは快晴ですね。寒さもそんなに感じない。
東鶴寺(トンガクサ)の登山口。
クルマ止めがある場所まで乗りつける。ここにある「無風橋」が今日のスタートライン。装備を整える間もなく、ゲートまで急ぐ、韓国のコースを歩くこと4度目にして、初めて入山料を支払う。3,200ウォン(約320円)。
ゲートからしばらくは川沿いの遊歩道。やがてお寺の建物が連なり、その建物が切れるとようやくコンクリートの遊歩道が終わる。ここが「香牙橋」。なんとも素敵な名前の橋ですね。
お寺では朝のお勤めが終わったところなのか、グレーの袈裟を着たお坊さんがぞろぞろとお堂から出てこられました。
岩で敷き詰められた歩きにくいコースを散歩気分でどんどん歩く。ゲートには管理人のおじさんがいたのに、ここまで山歩き風の人は誰もいないよ。
なだらかな歩きはすぐに終わり。ここからは、地図で見て覚悟はしていたものの一気の急登。あっと言う間に息が切れる。ペースもすっかりダウンしてしまう。
やがて、流れにも水が切れ、涸れ沢を横目に見ながら、あえぐあえぐ。するとシェルター(山小屋)が目に入る。ここがコース上の最後のトイレになる(その次は下山途中の上元庵までありません)。
何箇所かの休憩ポイントをやり過ごして、見事なナメ滝を見渡せるポイント。ここで一息入れましょう。
水を500mlのペットボトル1本だけにしたのは失敗だったかな。ザックを降ろした背中からもうもうと湯気が上がる。温度計を確認すると5度前後。もう少しあるかと思ったのにな。
木々のほとんどが落葉してしまう広葉樹。若葉の頃にはまだ少し時間がある今の季節は、コース上には陽の光が落ちてきて明るくて気持ちがいい。
さぁ、もう一息。
急登をジグザグに繰り返し「もう、アカン!」なんて思っていたら、ようやく稜線の鞍部に辿り着く。向かい側の斜面を駆け上がってきた風が冷たい。
ここから観音峰まではもうすぐ。左手は最高峰に通じるコースだけど、本格的な柵で進入禁止の意思表示がされている。恐らく当分歩くことは出来ないでしょう。
右手に取って、ほんのしばらくで、立派な屋根が付いた東屋風の休憩施設。ここが観音峰の直下。ちょっと趣がないけど、仕方ないね。荷物を降ろして記念撮影。
汗をぬぐって水を飲むと急速に身体が冷える。吹き付ける風が冷たいよ。
ここでピストンにして、今来たコースを戻るか、北西に伸びる稜線を辿り三仏峰(サンバルボン・775m)を経由して東鶴寺に向かうか。歩く前は、それが思案のしどころだと思っていたけれど、ここまで来たら、もう迷いは無い。この痩せた稜線を目の当たりにすると「ここを歩かないと鶏龍山に来た値打ちがない!」とさえ思ってしまう。
手早くサンドウィッチを頬張り、もう一度ザックを背負いなおそう。
やっぱり、ここから三仏峰までがこのコースのハイライト。
基本的に下りだから、もうほとんどしんどさはないのだけれど、痩せた尾根筋に強引にコースが設定されているから、怖い怖い。
本当に危険な箇所にはちゃんと階段やロープが渡してあるので危ないことはないけれど、精神上よろしくないのは確かです。手に汗握るなぁ。日本ならきっとこの尾根筋も通行禁止になるでしょう。
ここの下りでようやく一人とすれ違う。「おはようございます!」
這うようにして(?)三仏峰へ。
ここにはなんとニャンコがいる。「あれ、ズルがこんなところに!」猜疑心(警戒心?)が強いみたいで、興味はあるのだけど、こっちには近づいては来ない。一応記念撮影。
ネコだけではなく、いろんな種類の小鳥たちがかしましくさえずっている。小鳥はあまり警戒心がないようで、ボクのすぐそばにある小枝に止まってその音色を披露してくれる。途中の斜面では「ニワトリが歩いている!」と思ってびっくりしていたら、なんとメスのキジでした。びっくりしたなぁ。あぁしかし、もっともっと小鳥たちの名前を覚えないとダメですね。そしたら、きっと楽しみも倍増するのに!
ここからはもう一気の下降、上元庵というお寺を過ぎてからは、ほとんど散歩コースを東鶴寺まで。
この帰り道では大勢の方とすれ違いました。韓国の方は本当にハイキングがお好きですね。ボクは早朝に歩いたので、静かで気持ちの良いコースとなりましたが、季節と時間によってはそうとも言えないかもしれません。
観音峰までのコースは良く整備されていて、急登でしんどいのは仕方ないとして、オススメ出来る爽快なコースです。
しかし、観音峰から三仏峰までの尾根歩きはコース上の荒れ方が辛く、そう遠くない将来、入山規制が行われるような気がします。少人数の小さいパーティならいざ知らず、初心者も含めた大きいパーティで歩かれるなら、観音峰のピストンをオススメします。
決して長くないコースですが、急登、岩山、そして痩尾根、パイプで組んだ階段...などなど、韓国の山のエッセンスがギュっと詰め込まれた素敵なコースです。
でも、舐めないで充分心してチャレンジしてくださいね。
コース上の標識はしっかりしていて、まず迷うことはないと思いますが、コースの概念を知るためにも地図の携行をお忘れなく! ボクは自分の地図も持っていましたが、大田駅の観光案内所で登山地図のコピーをいただきました(ハングル表記のみ)。
また、ハッキリ言ってスニーカーではちょっと苦しいです。底が厚いトレッキングシューズ程度は必要だと思います。
当然のことながら、東鶴寺を過ぎるとお店は一切ないので、必要な水や食料は麓までで調達してください。ゲート付近には何軒ものお店が軒を連ねています。
パイプの手摺やロープをつたいますから、手袋は必ずご持参ください。
また、春や秋などの行楽シーズンには、コース上で渋滞することが容易に予想できます。時間には十分余裕を持ってお楽しみくださいね。下のコースタイムは実測タイムですが、早朝に一人で歩いて、なおかつ先行者は全くいない状態での時間です。あくまでも参考程度にしてください。
かなりオススメ。
KTXを使えば、ソウルから日帰りも充分可能です。帰りしなには儒城(ユソン)温泉で汗を流せばお楽しみも増すのではないでしょうか。
おつかれさまでした!
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