数年前の「海の日(7/20)」。カンカン照りの暑い日に六甲縦走コースを宝塚から歩いた。
息も絶え絶え、全身汗まみれになり大平山の手前で敢え無く挫折。逆瀬川にエスケープしたことがある。この縦走コースの東側(宝塚側)は展望が利かない代わりに、塩尾寺(えんぺいじ)からずっと木陰の中を歩く「夏向き」のコースだったんだけどなぁ。この当時は体力も、根性も、耐性もなかったから仕方ない。
で、それ以来あんまり真夏には歩かないことにしていたのだが、このところの妙なだるさしんどさは、きっと汗を流していないからだと気付き、歩く機会を伺っていた。でも、朝起き上がっても身体と心がどうも重く、なかなか最初の一歩が踏み出せなかった。こりゃいかん!
この後、八月の休みはびっちり予定が詰まっていて、この第一週の土日を逃すと「短い夏」の間に山で汗を流せそうにない。齢を重ねる中年の老体に鞭打って、前夜は悔し涙に枕をぬらしつつ(サンフレが負けた)速攻で眠り、翌朝は二時半に起床だっ!
行き先は随分前から決めてある。滋賀と三重の県境に連なる鈴鹿山脈第二位の高さを誇りながらも、奥深く静かにわびしく鎮座する「雨乞岳(1,238m)」。スタート地点からのアプローチも長くひっそりとした山行が楽しめそうだ。ボクの希望にぴったり。
この雨乞岳に決めたのは、今年の春先に永源寺の近くをクルマで走ったから。あの時見上げた雨乞岳は女性的ななだらかな姿ながら静かに雪をかぶり、人を容易に寄せ付けない雰囲気を漂わせていた。
「雪が溶けたら歩こう」と思い、地図も買い準備していたのだが、韓国のソラクサンで予想外の疲労を背負ったまま果ててしまい、とうとう春にチャンスは巡ってこなかった。
山頂は永源寺町にあるのだけれど、永源寺町からは歩けない。となりの土山町の登山口からスタート。
八月のアタマとは言え、少し日が昇るのが遅くなっているようで、5時ごろになりようやく歩けるほどの明るさになる。国道477号線「鈴鹿スカイライン」の滋賀と三重の県境にある武平(ぶへい)トンネルの滋賀側にある駐車スペースがそのまま登山口になっている。
20台は駐車できそうなこのスペースに4、5台停まっている。山中でキャンプしているのかな?
地図によると、この登山口から雨乞岳、御在所岳そして鎌ケ岳(1,161m)へのコースがあるようだ。この鎌ケ岳もなかなか食指がそそられる男性的な、鋭角にそびえる山容。いつかチャンスがあれば歩いてみたい(でも、ちょっとしんどそうやけどね)。
装備を整え、軽く準備体操をして、トンネルをまたぐような道を歩き始める。
今から思えば、この安易なスタートがあかんかったなぁ。
しばらくは薄暗い森の中をゴロタ石が転がるコースを上がる。ほんの少し、汗もかかないうちに武平峠の立派な標識。ここが三叉路になっていて「左が雨乞岳、まっすぐ行くと御在所岳、右は湯ノ山温泉」の表示。ここは素直に左へ...。
思ったよりしっかり踏まれていて、時折急な上りになるけどいいコース。事前の調査では消えかけているようなことが書いてあったのになぁ。唐突に意味も無い「鎖場」なんかあって、ちょっとびっくりした。ここで地図を開げておけば良かったんやけど。どんどん先を急いでしまった。
途中、何箇所かある岩場では下への展望が利き、遥か下にスタート地点が見下ろせる。「随分上がってきたんやなぁ」とは、なんとも呑気な感想だ。
見上げれば、右手に見える頂には立派な建造物が建ち「あれが御在所岳かな」と見当をつける。ところが、次の岩場でもその山頂が右手にならず、どちらかと言うと左手に見え始めたような...。おかしいなぁ。まるでこのコースはあの頂に向かっているようやんか!
で、ようやく地図を取り出すと...。
「あぁ、なんちゅうことや!」歩くコースを間違っている。この道は確かに御在所岳(1,212m)の山頂へ向かっているようだ。よくよく見ると、雨乞岳へのコースはあの駐車スペースから道路を横切ってから始まっているんだ。
一気に汗が噴出し、疲れが出てきた。くらくら。ザックから水を取り出し水分補給。タオルで汗をぬぐおうとして、メガネを落としてしまう。
もう、スタートしてから40分は歩いている。もう、今更ここから引き返せない。しゃぁない。このまま御在所岳を目指すことにしよう。
セミの音がやかましい。耳をつんざくように鳴いている(ご苦労さまやねぇ)。
この日は片道三時間のコースを歩く腹積もりでスタートしている。それが、高さこそそんなに違わないものの、およそ一時間のコースに短縮されたものやから、なんだかホッとしたような、物足りないような。何とも複雑な気分。
間も無く、広場に出て、それから雑木林をひとまたぎすると御在所岳山頂にある周遊道路(なんと舗装されている!)に出た。このコースを辿ると、あっけなく一等三角点へ。
「ウーム。なんだかなぁ」
それでも、誰も居ない山頂でベンチに腰掛け息を整え汗をぬぐう。「はぁ」。こんな俗っぽい三角点は初めてだなぁ。それでも一応記念撮影。デジカメでパチリ。
山頂手前の広場では早くも赤トンボがたくさん乱舞していました。今年は秋の訪れが早そうですね。
おつかれさまでした。
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