12/27・雪の裏六甲彷徨

有馬口から番匠屋畑尾根をつたい最高峰まで


2002年最後の山歩きは、六甲山。
この冬最大の寒波が到来と言うことなので、有馬口から最高峰まで沢を伝って歩き、あわよくば凍りついた滝を見ようという計画だ。
宝塚を6:25に出るバスで有馬まで行き、神戸電鉄に乗り換えて一駅、有馬口まで。この駅の南側にある無人改札が今日のスタート地点。
7:20だともう明るい、上空はうす曇り、風はほとんど無く、手元の気温計はほぼ0度を差している。今年のお正月にアイスガーデンで氷爆を見たときには有馬温泉で-5度だったから、今朝は凍っていないかな。入念に準備体操とストレッチをこなして装備を整える。寒い寒い。手袋をしていても指先が冷たい。

住宅街を東に向けて歩き、住宅が途切れたところからコースは始まる。金網のゲートの脇を通り抜けると阪神高速の高架、水無川に沿って工事用のダートコースを歩く。ここは開けた谷で歩いていても気持ちがいい。しばらく身体を動かしているとようやく硬さもほぐれて暖かくなってくる。
大きな堰堤を越えるとすぐに分岐点に出る、まっすぐ道なりに進めば水無谷、今回は右にとり深戸谷に入る。しばらく行くとコンクリートで固められた道は終わり、谷沿いのコースになりいきなり一つ目の大きな堰堤に出る。
この堰堤をコース無き道を苦労して巻く。谷底を這うコースはどうやら本来のコースからは大きく外れているようで、まるで踏み跡もなければテープもない。知力も体力も目一杯総動員しなければならない。時間のロスも大きい。

深戸滝手前にある無名爆 これが深戸滝・凍っていない

そうこうするうちに深戸滝に遭遇。一息入れる。今日はストーブでお湯を沸かすヒマもないだろうとポットに熱い紅茶を入れている。これが正解。
しかし、水量が少ないこの滝は全く凍っていない。気温はほぼ0度。ちょっと冷え込みが足りないようだ。 滝をなんとか巻く。これが苦労した。
地図を見るといくらも進んでいないのに時間だけは恐ろしいほど食っている。
張り出している木の幹に抱きつくようにして崖をよじ登る。滑落したら命が危ないかもしれないなぁ(次回からはヘルメットが必要?)。

途中無理な体勢から左足をふんばって、お尻の筋肉がつってしまった(もはやここまでかと観念しかけたが、なんとか持ち直した)。
再び沢沿いを進むうちに、こんどは腐った木の枝を踏み抜き体勢を大きく崩し右足のスネを思いっきり岩に打ち付けてしまう。もう、息が出来ないほど痛かった。その場にうずくまってしまう。でも、歩けないわけでもない、なんとか立ち上がり歩き始める。

二つ目の堰堤も苦労して高巻くと久しぶりにテープが目に入った。と言うことはボクが今苦労して歩いたコース以外にここまで来れる道があったはずだ。どこで見落としてしまったのか? 深戸谷に踏み込んでからは苦労の連続だったのに!ここからは、ほとんど知力は使わない体力勝負のコース。なんだか少し淋しさも感じる。
テープを頼りに三つ、四つ、五つ目の堰堤を通過。すっかり雪も積もって白い世界。五つ目を通過するとすぐに谷が分岐する。テープを頼って右の谷へ。
やがて谷筋は終わり、六甲にしては珍しい杉の植生林に入る。ほとんど直登の一本調子の登りは応える、植生の中だけに薄暗いしね。所によっては10cmほど積もった雪にグリップが利かない。
そうこうするうちにようやく高尾山に着いた。時間は9:50。ここまで途中一回の小休止を挟んだだけで2時間半も過ぎている。コースを外れてかなりロスしたとは言え、今日は遅すぎるな。ポットに手を伸ばす。雪だとなかなか腰を降ろす場所がないのが苦しい(敷物を持ってこようと思いながら、いつも忘れてしまう)。

少し淋しい高尾山・山頂 湯槽谷峠から主稜線を見上げる

しばらくは下り、裏六甲縦走路に出合うと格段に道が良くなる。湯槽谷峠まで来ると新雪には幾つもの足跡がついいている。ここから番匠屋畑尾根を六甲主稜線にある極楽茶屋跡まで詰めていくだけ。すっかり葉を落とした雑木林の中で見晴らしが効くだけに、目標地点が見え歩くのも気楽だ。但し、ここから見える主稜線はかすみ、雪が降っているようだ。
細かいアップダウンを繰り返し主稜線に近づく。地図上では1時間30分と書いてあるが1時間足らずで極楽茶屋跡まで詰めてしまった。

それにしても、今日はここまで誰にも逢わなかったなぁ。風が無く細かい雪がしんしんと落ちてくる。枯れ枝には美しい樹氷の華が咲いている。白とグレーだけの完全なモノクロの世界。クルマも走っていないようで静かだ。
ここからは東六甲ドライブウェイを最高峰まで歩く。時折命知らずのドライバーがクルマを走らせてくるが静かなのは変わらない。一軒茶屋から最高峰に至る最後の上り道で降りてくる人にようやく会った。

雪の最高峰は意外なほど雪が無く、凍てついた三角点が淋しそう。手早く記念撮影を済ませ、途中の屋根がある東屋に退却。
ここまでにお腹が鳴っていたのでストーブに火を入れカップヌードルを食べた。生き返った!
しかし、お湯が沸くのを待つ間の寒かったこと、汗に濡れたヤッケを脱ぎフリースを着込む、そのわずかなスキにヤッケの濡れた部分はバリバリに凍てついてしまっていた。気温は氷点下3度ほど。
残念ながら氷爆は見ることが出来なかったが、久々のルートを探りながらの沢歩きは面白かった。途中お尻がつったり、スネを打ったりで散々だったけど、六甲の魅力と奥深さを再認識できた楽しい山行になりました。やっぱり六甲はこの時期が最高だ!
時計を見ると、宝殿橋でバスを捕まえるのにちょうどいい時間。

樹氷の華が咲いている 近づいて見ると細い氷の糸

今日のコースは初心者にはちょっと苦しいし、ファミリーにも向きません。たかが六甲とは言え、厳寒期にはそれなりの計画・準備と装備、そして経験と技術が必要です。今日のコースでも軽アイゼンがあれば役に立つ部分もありました。特に裏六甲では歩いている人も少ないので助けを求めるワケには行きません。しっかりとした計画と装備でお出かけくださいね。

この日で2002年の山あるきはおしまい。香港の二つコースを歩いたことははとても楽しい経験になったし、偶然の好天に恵まれた蓼科岳も忘れることが出来ない山行になりました。 2003年も楽しく、そして怪我や事故が無いように山あるきを楽しみたいものです。

おつかれさまでした。

 

神鉄有馬口7:20〜一つ目の堰堤8:10〜深戸滝8:45〜四つ目の堰堤9:25〜高尾山9:50〜湯槽谷分岐10:10〜極楽茶屋跡11:05〜11:40六甲最高峰12:25〜12:45宝殿橋バス停