日本中にこの冬一番の寒気が流れ込んだ朝、東京は意外に暖かな夜明けだった。
きれいな朝焼けの中、迎えのクルマに乗り込む。目指すは群馬県の赤城山だ。
赤城山(あかぎさん)は関西に住むボクでも国定忠治のふるさととして知っているくらい著名な山だけど、登山の対象としてはそんなに人気がないようだ。インターネットで検索してもそんなに多くはヒットしてこない。でも、それにはワケがあって、実は赤城山というのは総称であって、赤城山というピークは存在しないのだ(ひとつ勉強になったなぁ)。
で、今回歩いてきたのは赤城山の中で最も高いピーク、黒檜山(くろびさん・1827.6m)。
大沼(おの)のほとり、大洞にある土産物屋が並ぶ一角にクルマを止める、ここが今日のスタートライン。なんだかひっそりしていて、うら淋しい。季節はずれの海水浴場のようやね。
今回はナイスガイ・フジタと二人のパーティ。車載の温度計によると外気は氷点下5度。クルマから降りて準備をしているだけで、もう耳が寒さで痛い。
大沼の外周道路を登山口に向かって歩き始める。ここから見上げても黒檜山はガスがかかっていてほとんど見えない。大沼は鉛色の湖面(沼面?)に細かいさざ波が立って、人気がまるでなく淋しい限りだ。なんか日本じゃないような気さえした。
まだ身体も暖まっていないのに、すぐに登山口に到着。ここから山道が始まる。
いきなりの急登に次ぐ急登。しかも、数日前の雪が溶けて、それがこの寒さでカチカチに凍り付いて、その上に新雪がうっすらと積もっているという状態。クツが滑る滑る。はっきり言って「危ない」です。
それでも、岩が階段状になっている急坂をへばりつくように登り、高度を稼ぎます。滑って踏ん張りが効かないものだから、何か手がかりを求めて手を着く回数も増えるしね。キツイ、キツイ。あっと言う間に息が上がってしまいます。15分歩いたか歩かないかというところで一息入れてしまう。
この頃から細かいパウダースノーが舞ってきて、あたりは一面の銀世界。もちろん、視界もそんなに利かなくて、大沼の水面はもう見えないし、上を見ても何も見えない。
雪の中にしっかりとした道が続いているから、道に迷ったりコースから離れてしまう心配は全くない。この休憩で先頭を元気で若いフジタに代わってもらう。
相変わらずの急登が続き、ボクはもうフジタには付いていけない。見る見る間に彼の背中が遠くなっていく。ムリをせず自分のペースで歩いて行くしかない。しばらく行くとフジタが待っていてくれる。それを何度か繰り返す。
高度が上がればクツのグリップも効いてくるかと思ったけど、相変わらずそこら中がツルツル。それでなくてもけっこうキツイコースなのに!
何度か目の休憩でとうとうシビレを切らして先日購入した軽アイゼンを装着。うん。これはなかなかエエ感じや。滑る回数が1/4ほどになる。なんでもっと早くつけへんかったのか。まっ、それでも歩くスピードはそんなに速くはならへんから、またフジタの差はまたどんどん開いてしまうけどね。
空が明るくなってきたと思ったら、ようやく鞍部に到着。登山口からここまでずっと一本調子の登りだっただけに、正直言ってしんどかった。帽子をかぶっていないフジタの頭は茶髪ならぬ「銀髪」になっている。
ここからほんの少しで黒檜山の三角点に到着。雪は結構深い。
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ようやく、赤城山。黒檜山に到着! |
ナイスガイ・フジタの頭は雪で真っ白に
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ストーブに火を付けて、コーヒーを飲み、例によって日清・ごん太をすする。美味しい! 先に山頂に着いていた二人組は鍋物を作り始めている。凄いなぁ。結局この日はこの人達を含めて7名の人たちに山中で会いました。
山頂は意外なことに風がほとんど吹いておらず、暖かく感じる。温度計は丁度0度。
この山はほとんどが落葉樹で、木は全て葉を落としている。あまりのしんどさにどんな樹木がはえているのか目にほとんど入らなかったけど、転びそうになって掴まった木はサルスベルが多かったような気がする。それに、ツツジも多く見かけた。すっかり葉を落としてはいたけど、しっかり芽はついていて、新緑の頃には花も葉もそれは綺麗なことでしょう。
小一時間の休憩を取って駒ヶ岳を経て大洞まで下山開始。しばらくは楽勝の尾根道かと思っていたのに登ってきた道に負けず劣らず急な下り。
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黒檜山から駒ヶ岳に向かう稜線も雪の中 |
稜線にある祠に何を祈る?
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登りよりも下りでこの軽アイゼンは威力をより発揮。フジタがつるつる滑っているのを尻目にボクはがっちり歩けます。残念ながら、それでもボクの方が歩くのが遅いんだけどね。
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駒ヶ岳山頂も雪ですっぽり |
やがて駒ヶ岳(1,685m)のかわいいピークに到着。間断なく細かい雪が降り続いています。きっとここは絶好のビューポイントでもあるんやろうけど、何にも見えない。このあたりで積雪量は40〜50cmというところでしょうか。
ここからしばらくは稜線をつたう楽しいコース。でも、こういうコースはすぐに終わってしまい、やがてまた急な下り。鉄パイプで組んだハシゴ(階段?)が何カ所かあり、これもなかなか雪が凍り付いてやっかいです。
しばらく行くと湖畔の国民宿舎の建物や大沼の水面が見えてきて、苦しかったこのコースにも終わりを予感させてくれます。
徳川の埋蔵金を探すどころか、自分の身を守るのが精一杯という感じでしたが、赤城山の雪中行軍、なかなか面白かった。またチャンスがあればチャレンジしてみたいですね。
「今回の教訓」アイゼンを持っているのなら、早めに装着しましょう。雪道でストックは有効です。雪の上には座れないので、敷物か折り畳み椅子を持っていくと便利ですよ。氷点下の場合は耳を保護するものがあればなお良いでしょう。
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関越道のサービスエリアから赤城山をふりかえりました。 |
ボクがナイスガイ・フジタを誘っておきながら、結局、ボクが迷惑を掛け通しでした(ブジに帰れてよかった)。また一緒に山行しましょうね。
おつかれさまでした。
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