気が付けば、今日から12月。もう歳末、師走なのですね。
今回は少し足を伸ばして但馬国・氷ノ山(1,510m)へ行ってきました。先週からの冷え込みで、冠雪したというウワサを耳にしたので、今シーズン初の「新雪ハイク」です。
早起きして、4:00に西宮を出発(いつも早起きだから4時はムチャクチャ早いというワケではないが...)。中国・舞鶴道を経由して福知山から9号線。関宮で国道を離れ、氷ノ山・鉢伏スキー場方面へ。福定という集落に登山口と駐車場(福定親水公園)があります。
途中、路面が濡れているのが気になったけど、雨は降っていない。良かった。クルマのドアを開けると一気に冷たい空気が車内に入ってくる。そう言えば道中の気温表示は1度とか3度だったなぁ。手早く準備体操とストレッチ、そして装具を整える。今日は久々にストックも持ってきた。
6:40に駐車場を出発。止まっているクルマはボクのクルマだけ。今日の氷ノ山は「貸し切り」かな。
この時間になると、もうすっかり明るくなって、上空には高く薄い雲がかかっているが、青空が広がっている。いい天気になりそう。予報通り、気温も上がりそうだ。山頂付近は雲がかかっていてよく見えない。ちょっと悪い予感もするけど、大丈夫でしょう。トイレの前を通り過ぎると登山口です。
最初は八木川の河原を歩き、まず堰堤を高巻き。飯盒炊さん場(?)を通る。布滝という落差が大きく(65m)岩を這うような滝の水音が聞こえてくると、木で出来た橋を渡り本格的なやま道のスタート。
広葉樹の森はすっかり葉を落としていて、明るい道だ。足元には分厚い落ち葉の絨毯。九十九折りでそこそこの角度がある道でぐいぐい高度を稼いでいく。この道は左右とも谷になっていて、そのいずれもが滝で、折り返し点でどっちかの滝を見ることができます。
身体が暖まってきて、そして息が上がる。立ち止まって、まず手袋をはずす。しばらくして、また立ち止まり、今度はフリースを脱ぐ。こうして何度か立ち止まっては息を入れないと...。どんどんペースが落ちる。振り返るとずいぶん遠くまで見下ろせる。
|
隣の尾根筋のシルエットが美しい
|
やがて、九十九折りの道が緩やかになり、森が杉の植生に変わると地蔵堂に到着。腰を降ろして汗を拭う。
その後、しばらくはなだらかな道が続き、何度か細い水の流れをまたぐ。氷ノ山は水が多い山だ。「引法の水」「一口水」と名前の付いた水場がある。
「一口水」を過ぎて、もう一足で「氷ノ山越」という稜線にある峠に到達。ここには避難小屋とベンチがある。鳥取側からの道と「ぶんまわし」コースの道とが出会う山の十字路でもあります。水分を補給して、タバコを一服。ザックを降ろすと背中からもうもうと湯気が上がるのがわかります。
ここではもう水の音もしない。静かだ。ほんとに静か。鳥取側から吹いてくる風が木々を揺らしているが、さざ波のような音を立てるはずの木の葉はもうなく、僅かに笹の葉がこすれ逢う音がするだけだ。この風のお陰でしばらくすると身体が冷えてきた。
|
見上げれば歩くのがイヤになる? 丘の上にあるように見えるのが、山頂の山小屋
|
「氷ノ山越」からは軽快な尾根筋歩き。道の両脇には雪が目立ち、霜柱が立っている。陽が当たる場所は道がぬかるんできます。細かいアップダウンを繰り返しながらも、徐々に高度は上がる。
道の両側には幹と枝だけになったブナの森。葉を落として眠りに就いたばかりの枝には白いものがうっすら付着しています。氷ノ山では樹氷が見られるなんて知らなかった。
|
空の青さと、樹氷の白さ
|
二つの小さなピークを踏み越えて行くとそこには雪が多く残っていて、やがて、白い道になっていく。今朝も少し降って積もったようだ。今日は誰も先行者がいないから、白い道はボクのためだけに用意されているような気がして嬉しくなる。
サクサクと初雪の新雪を踏みしめて歩いていく。心がウキウキしている分、さっきまでのしんどさを忘れて、身体も軽快に動くのですから不思議ですよね。
ここまで登ると樹氷のお尻が少しずつ長くなって、昨夜から今朝にかけてはどちらから風が吹いていたのかが正直に分かるのが面白い。
振り返れば氷ノ山越の避難後屋が見え「ぶんまわし」コースの道筋が目でたどれる。また、眼下にはまだ枯れ野原が広がる鉢伏山のスキー場が雪を待っている。この山はこうして振り返らずにはいられない不思議な魅力を持っている。
|
スキー場のオープンはまだまだ先?
|
木で組んだ階段を上り詰めると、ようやくというか、あっけなく頂上だ。遮るものがほとんど無い頂上には雪はへばりついているだけ。北西から吹き付ける風が恐ろしく強い。三角点にタッチして、早々に山小屋に逃げ込む。そうそう、新聞で読んだ通り「尼工ヒュッテ」は姿を消している。山小屋は風を避けるだけだが、もし、この小屋が無ければ、お湯も沸かせないし、山頂には長く留まってはいられないだろう。お湯を沸かして日清のごんぶとを食べる。おいしい。
真上は青空が広がっているのに、地平線付近は雲がかかっていて、東西南北どの方向ももう一つの展望だ。去年の秋にはここから丹後の依遅ケ尾も見えたのにナ、今日は確認できそうもない。
|
|
山頂の三角点と山小屋 |
山頂から、南西(鳥取側)を見る
|
休んでいる間に陽が射し込んできて、相変わらず風は強いものの、気温が上がってきたようだ。霜が溶ける音が小さくパチパチと聞こえる(ほんとだよ)。
今日はピストンで、きた道を引き返す。歩いていても気温が上がってきたのがわかる。雪・氷・霜が溶けてあちこちが「ぬかるみの世界」に変わっている。アイゼンは要らないけど、スパッツは絶対に必要ですね。
枝に咲いていた樹氷の華が風にあおられてどんどん落ちていく。もったいないなぁ。滑らないように足元に気を配って歩く。
「氷ノ山越」までに3組6人とすれ違う。やっぱり、貸し切りではなかったな。その先でも7人組のパーティに出逢うなど、氷ノ山もなかなかの人気だ。
途中三度転んでしまったけど、いずれも落ち葉の上で助かった。やがて「引法の水」。持参したペットボトルに水を汲んで持ち帰る。思ったほど冷たくないのが印象的。手が切れるほど冷たいかと思ったのに。
|
この穴(?)から水が湧いているのです。 「引法」は「弘法」の誤りなのかな? |
落ち葉の絨毯を歩いていると、行きしなとちがって、そうしんどくもないからいろんなものが目に入る。草も枯れて、葉が落ちて森の奥まで陽が射すからよく見えるせいもある。ここには面白い木が多い。
目が行くのは木の洞だ。この洞を見ていると「木の精」とか「コロボックル」なんて言葉が頭をよぎる。そんな気分にさせてくれる清々しい森なんだ。
「こんな急坂をよく上がってきたなぁ」なんて思いながらいつしか滝の音が耳に届くようになる。もう少しで駐車場だ。あんなんに多くの人とすれ違ったのにクルマはボクのを含めて4台しか停まっていない。おかしいな。
どろどろになったクツを脱いで、汗びっしょりになった服を着替えるとさっぱりしました。心地よい疲れを感じながらタバコを飲んでいると、なんか幸せな気分。
次は何処を歩こうか。
今日の地図はエアリアマップ・山と高原地図#60「氷ノ山鉢伏神鍋」です。
|