10/13・湖北・横山岳で濡れネズミ

湖北の名瀑であまやどり


どうも滋賀県のやまとは、相性が悪いようだ。
昨年の8月に蓬莱から小女郎峠を経て蓬莱山のときは雨こそ降っていなかったが、稜線に出てからは凄いガスで展望は利かなかった。続いて11月に坊村から御殿山コースを経て武奈ケ岳に登ったときは、コースの2/3は雲の中を歩いているような感じで、全身がずぶ濡れになって、山頂に辿り着いたものの、何も見えなかった。
そして、今日は湖北の横山岳(1,131.7m)へチャレンジ。

早朝、2:30に家を出発したときは満天の星空で、素晴らしい天気を約束してくれていた。名神から北陸道を経て木之元インターに近づくと窓に雨粒が...。
杉野という集落の奥にある登山口に着いたのは5:00。ここには10台は駐車できるスペースがあるが、1台も停まっていない。一番乗りだ。
地面は濡れているが、雨は降っていない。ヘッドライトをおとすと、先週のトンネルではないけど、漆黒の闇が広がっている。しばらくボ〜としていると、かすかに明るくなってきた。手早く準備を済ませ、準備体操。この頃には手探りでモノがつかめるほど明るくなっていた。

まだ明け切らない中を沢づたいに進む。墨を流したような暗さ。わずかな明るさが漂い、かなりダークなモノクロの世界だ。
足元の草は濡れている。しまったなぁ、スパッツを持ってこようと思っていたのに、忘れてしまった。みるみるうちにズボンの膝から下が濡れていく。
しっかりした踏み跡がついていて、道に迷うようなことはない。やがて、何度も沢を渡る。沢を一回渡るごとに、明るさが増してゆき、渓にも少しずつ彩色されていく。

横山岳の渓にはワサビを期待していた。あるwebのページに「ワサビの宝庫だ」と書かれていたからだ。根っこや太い茎にはさして興味はないのだけど、地表に出ている細い茎と葉を採集して、醤油漬けにしたかった。細く険しい渓にすれば豊かな水量だが、ワサビはない。ボクのようなスケベ心をもった人が取り尽くしてしまったのか...。ようやく見つけた株は5、6本の葉を出していた。次回に期待と言うことで、今回は諦めることにした。

それにしても急登に次ぐ急登だ。息が上がる。
まだ、明け切らない中、雨がポツポツ落ちてきた。一汗かいてヤッケは脱いでいる。どうしようかなっと考えながらのろのろ歩みを続ける。
ハ〜ハ〜肩で息をしながら登っていると一つ目の大きな滝「経の滝」が見えてきた。落差が17mもある立派な滝だ。ザックを降ろし一息つきたいところだが、この頃には雨が本降りになってきたので先を急ぐ。
すっかり雨模様になってしまった。ヤッケや雨具を出すまでもなく、既に全身がびしょ濡れの濡れ鼠になってしまった。そろそろザックカバーも買わないといけないな。

「経の滝」

依然、登山道はしっかりついていて道に迷うことはないが、道の荒れ方は激しい。至るところで道が崩れ、恐る恐る歩みを進める。要所にはロープが渡してあるが、それも追いついていない状況だ。振り返れば断崖があり、足を誤れば滑落の危険性もある。ピクニック気分でスニーカーでこの山に踏み込むべきではないですね。
大粒の雨が降りしきる中、進もうか引き返そうか考えていると、二つ目の滝「五銚子の滝」が木の間だから見えてきた。高さが5mほどの滝が三段連続していて、そのうち上の段と下の段が二流に別れて落ちていて、合計五段の滝になっている。見事な景観になっている。
雨は止む気配は全くなく、この高さ(800m)までくるとガスも深くなり、視界も効かなくなってきている。広葉樹の根本に腰を降ろし「雨宿り」としゃれてみる。腰を降ろし動きを止めると、寒気が襲ってくる。温度計を見ると10度を少し上回っている程度だ。

「五銚子の滝」から山頂までは高度差はもう大したこと無いが、角度が急になる。ロープをつたいながら山肌にへばりつくようにして登っていく。渓からは離れているので、もう水が流れる音もなくなり、木の葉を打つ雨音と時折激しく鳴く鳥の声だけの世界だ。もちろん、ボクの激しい息づかいもこだましているねんけど。
ガスのお陰で視界が20m程しかない。もし快晴だったら、素晴らしい景色が期待できそうなビューポイントが何カ所かあったけど、振り返っても乳白色の空間が広がっているだけだ。
やがて、見上げる木々の間にも空間が見えてきた。もうすぐ山頂だ。

びしょ濡れで重い身体を引きずって、ようやく辿り着いた山頂は、相変わらずのガスの中。北琵琶湖から遠く白山までが見渡せるはずが、一面の霧。
ただ幸いなことに、雨は上がった。ストーブに着火してチキンラーメンとおにぎりを頂く。ラーメンの熱いスープが美味しい。物音がしない静かな山頂はもちろん「貸し切り」だ。

下山は鳥越峠まで稜線をつたい、コエチ谷を下るコース。
登りがあれだけの急登だったていうことは...。
忘れずに持ってきた革のグローブが役に立った。怖いぐらいの急斜面、ロープを頼りに駆け下りる。怖いぐらいではなく、怖かった。峠付近でようやく一息入れた。下りは登りの倍以上気を遣う。
このころには、ガスも晴れて、薄日も差し込む。峠付近にはヤブツバキの群生。種を探して採集。挿し木用にも何本か穂も採集した。上手く付いたら「五銚子」と名付けよう。どんな花が咲くのかな。

厳しい山だったけど、整備もされていて、下山してしまえば愛すべき名山であることは確かだ(山中にいるときは、しんどくて「憎んで」いたけど)。
登山口にはかわいい登山者名簿の記入台があり「杉野山の会」の活動が判る。この会が難所にロープを張っていたり、登山道の整備を行ってくれているのだな、と感謝する。ほんとに山を愛する方たちの会なんだなぁ。ありがとうございます。
最後にこの横山岳はしっかりした装備が必要です。今日の悪天候を差し引いても、初心者にはいろんな意味でちょっと厳しいコースですね。スパッツとステッキがあれば役に立ちます。そして必ずロープを頼るので、手袋は必需品でしょう。また、谷底をつたうコースなので、増水時には通行不能な箇所も多くあると思います。
ファミリーには途中の「経の滝」までなら、ちょっと冒険心に富んだピクニックコースとしてオススメします。
地図は1/25,000で近江河合・美濃川上。

おつかれさまでした。

 

登山口(5:20)〜(6:20)経の滝(6:25)〜(6:50) 五銚子の滝(7:20)
〜(8:35)横山岳(9:10)〜コエチ谷入口(11:10)〜登山口(11:15)