観る予定はなかったけれど、事前にtodayさんから教えていただいていたし、映画館で見るポスターもなかなかいい。それにほとんどのシネコンで上映されているので、あまり場所と時間の制約がなく観ることが出来るのもいい。そんな理由でcoexのmegaboxで拝見することになりました。
「鈴の音/Old Partner」と紹介していますが、日本での公開も決まっていて「牛の鈴音(すずおと)」だそうです。
頑固な農夫とそのおじいさんが飼っている年老いた牛の話し。特にストーリーが用意されているわけではない。淡々と田舎での日常が映し出される。
冒頭、田舎の仏舎利塔(?)に老夫婦が祈りをささげる。それが何を意味するのかわからないけれど、その祈りの意味を探しにボクは時をさかのぼる旅に出るわけだ。
このお話しのキーワードは『頑固』かな。
この寡黙なおじいさんも相当頑固だけど、牛も飼い主に似てくるのかそうとう頑固者。
家から離れた畑で仕事をしているとこころ、おばあさんがお昼のお弁当を下げてやってくる。おばあさんはボウルにまっこりをあけ、あぜ道でうつらうつらしている老牛に飲ませる。その姿が微笑ましい。
ほのぼのと微笑ましいシーンだけがピックアップされているのではなく、この牛と一緒に生活をしているがためにこうむる(?)様々なエピソードも紹介されている。だいたい、このおじいさん、機械は使わないのだ。動力源はすべてこの一頭。それに、牛に食べさせる草を刈るために、畑でも田んぼでも農薬を一切使わない。だから、効率化とか収穫量とか、そんなものとはかけ離れたところに存在している。
春になって畑の土を起こすのも、おじいさんとこの牛だし、大豆の苗の植え付けも自分でするし、畑の雑草を抜くのも自らの手。そして、このおじいさん、足が悪い。文字通り畑にはいつくばって泥だらけになって淡々と作業をこなす。
寄り合いに行くのも、病院へ診察を受けに行くのも、クルマでは行かず(そもそもクルマもないんだけど)、牛に牽かせたリヤカーでのんびりと路を行くのだ。帰り道、くたびれたおじいさんが居眠りをしてしまっても、この牛は道を誤ることなく我が家へと向かう。
子供たちが孫を連れて帰省してくる。「この牛は40年もこの家に居て、ボクよりも長く生きている」とささやき。おばあさんも「私は夫にも牛にも恵まれなかった」とつぶやく姿が何とも言えない。
必見ではないかもしれないけれど、ご覧になっても損はない。ふっと心が和み、恐ろしい勢いで変貌する田舎の原風景、その意味が理解できると思います。
おじいさんは牛の市から怒って帰って来る。
そうそう、こうじゃなくっちゃ!!
おしまい
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