「パイラン」

27/Nov./2003

  

今回は「パイラン」(原題:白蘭、2001年韓国)。
場所は十三第七藝術劇場。近頃なかなか忙しくて映画を観る機会がなかったけれど、上映最終日最終回にようやく駆けつけた。
しかし、この日も忙しく、上映時間ギリギリに劇場に入る。入った時にはすでに予告編が流れていた。

原作は浅田次郎の短編小説「ラブ・レター」だとか。泣けると評判の作品らしいが、僕は読んだこともない。
40過ぎても独りフラフラと暮らす中年の男が、ある日突然自分の妻が亡くなったと知らされる。思い起こせば昔、男は金欲しさに見知らぬ外国人に戸籍を貸して、偽装結婚したこともあった。一度も会ったことがない妻の遺体を引き取りに向うその先で、男は彼女が懸命に働き、生活していたこと。そして会ったこともない自分を心の支えにし、また切々とお礼の手紙を書いていた事を知る。

そんなお話しだろうか、それを韓国を舞台にリメイクされているのが今回の作品。
男を演じるのはチェ・ミンシク。「シュリ」の北朝鮮兵士で有名な役者。
そして見知らぬ妻を演じるのは香港の女優セシリア・チャン。そういえば彼女を観るのは「喜劇王」以来かなぁ。

前半の描き込みがなかなかよくできてて素晴らしい。
チンピラヤクザのイ・カンジェ(チェ・ミンシク)はうだつのあがらない40過ぎの独身男。自分と同期だったヨンシクはすでに組織のボスになっており、彼の下でしがなく暮らす。若い衆はボスと手前、イ・カンジェに対して敬語を使うが、内心は馬鹿にしている。
このチンピラ中年イ・カンジェの情けない実情がひしひしと描かれている。話しも解り易いし、描き込みも丁寧。なかなか感心した。良く出来た脚本と演出、演じるチェ・ミンシクの賜物かな。

後半に入って、亡くなった妻パイラン(セシリア・チャン)の存在があきらかになってくる。ここら辺りで話がグッと変わる。イ・カンジェを心の支えに懸命に生きた彼女の実像が回想録で語られる。ここからは泣ける、しみじみとしたお話し...、のハズなんだけど、どうも僕はピンとこなかったかなぁ。
セシリア・チャンは美しく、それでいてはかない彼女の身上がひしひしと伝わってくるのがわかるけど、どうもそれがイ・カンジェに繋がってくるのかが解らない。戸籍を貸してくれたとは言え、会ったこともないイ・カンジェに、あそこまで慕う気持ちが起こるもんだろうか。この気持ちが解らないので後半は全然のめり込めず、淡々と映像を観ていただけになってしまった。
最後にセシリア・チャンがビデオレターのように写っているのも、ちょっと出来過ぎのような気がするな。
おまけに親分を裏切ったために暗殺者が送られてくるのも、そりゃ当然といえば当然の展開。ちょっと頭を傾げるようなところだけど、本当に純粋過ぎるようなストレートな話しだし、それだけにしみじみとくるいいお話だったんだろうな。

いいわけかも知れないがこの日はとにかく忙しかった。
劇中も携帯電話をマナーモードにしていたけど、電話がかかって来て震える度にドキっとさせれられる。映画を観た後もまた予定があって、すぐに劇場を後にし次の予定へ向かわなければならなかった。
“泣ける”と評判の映画だと聞いていたけど、ちっとも感動出来なかったのは気持ちに焦りがあったからかな。やっぱり映画を観る時は落ち付いてゆったり観んとアカンね。

セシリア・チャンがとにかく美しかったです。

次回は「インファナル・アフェア」をご報告します。