「えびボクサー」

20/Oct./2003

  

今回はテアトル梅田で観ました「えびボクサー」、2002年イギリスの映画。
“えびボクサー”とはいったい何のことやら? 予告編やチラシを観る限り、その名の通り巨大なエビがボクシングをするのかという破天荒なストーリ。
あまりにもバカげたコアな映画なのだろうかと、僕もとうとう観に来てしまった次第なのである。

ところがこの映画、実際観てみると想像していたのと全然話が違う。
これだけバカげた設定をしながら、ボクサーとして活躍する“巨大なエビ”を描いているのではなく、それをなんとかTV局に売り込もうとしている人間たちのドラマを描いているのだ。
普通こんな巨大なエビがいたらマスコミもすぐに食い付きそうなもんだけど、これがなかなかそうもいかない。
主人公たちはこれを一所懸命売り込もうと奮闘するが、エビを飼育するのもそう簡単にはいかない。
与える餌も半端な量じゃないし、乾燥しないように一日何回も保湿クリーム塗らないといけない。暴れださないよう全身を縛っているので、定期的にマッサージもしてやらないといけないなんてたいへんだなこりゃ。
そんなバカげた設定なのに妙にリアルで、おまけに登場人物達の人間関係もうまくいかなくて、話は全然進まない。
エビが活躍するまでにまだかまだかと待たされるうちに苛立ちも憶えてくる。
ようやくTV出演が決まったというのに、結局ボクシングでもなくてなんじゃそりゃ!

最後は何時の間にかエビとの間に愛情が生れてきて、エビにとって幸せなのは生れ育った海の中で生きることと、やっぱり海に返してやることにするのだ。 なんだかおきまりのようなパターンだが、ああなるほど、この映画はそういうことを伝えたかったんだなぁ。
しかしこの映画、本国イギリスでは「エビの虐待だ!」だなんて上映中止になったなんて、やっぱりそういうことも全然考えてもらえないままバカげた映画としての烙印を押されてしまったんだろうか、多分。
一部の人間のみぞ知る、コアな映画でした。

次回は「運転手の恋」をご報告します。