「戦場に咲く花」

27/Aug./2003

  

さて、場所を十三の第七藝術劇場に移してここで「戦場に咲く花」(2000年中国・日本、原題:蒼花劫)。
七藝に来るのは実に久しぶりだ。劇場に入った時、ところ狭しと置いてあるチラシに目を向けて観ると、今後の七藝のラインナップはなかなか期待出来そうだ。思わず「テハンノ〜」「運転手の恋」「パイラン」の前売りを買ってしまった。前売り券って、買ったはいいが実は他の劇場でも上映されることになって、そっちの方が良かったなぁ〜なんて思うことがよくある。ま、今回は他に上映しそうな劇場もない作品だろう、別に七藝でもいいしね。

さて本編。
中日戦争を題材にした、戦争がもたらした悲劇を綴るドラマだ。日本語字幕と中国語字幕が出る変わった作品。

南満州の鉄道のとある駅。
戦傷の為、この駅で療養していた一人の日本軍人、菊地(緒方直人)が死体で発見される。その報を受けやってきたのは憲兵隊長の平岡(平田満)、彼は菊地の先輩でもあった。
すぐさま平岡は犯人を突き止める為、この駅に務める4人の中国人を尋問する。駅長とその妻、ポイント切替工、そして孤児の少年の4人。平岡は一人づつ尋問を始めるが、だが4人いずれにも殺人の動機があった事が解る。
犯人は誰なのか? しかし、やがて意外な真実が明らかにされていく...。

この映画、宣伝チラシから観ても最初は緒方直人が主演なのかと思ったら、実は違った。冒頭、顔を見せないままに彼はいきなり死んでいる。
そして犯人探しが始まるが、この映画は決して推理サスペンスのお話しでは無いのだ。登場する4人の中国人が、それぞれ尋問されていく中で軍人・菊池の素顔が回想シーンで綴られて行く。当時の日本軍人が中国人にとっていかなる存在だったのか。日本軍人によって引き起こされる苦悩、悲劇。そして中国人の日本人に対する姿勢、考え方。
中国人達が日本軍人を“鬼子”と呼んでいるくだりでもみてとれるように、まさに鬼の侵略者だったに違いない。この映画でも描写はまだ甘いほうだと思う。

駅長役の人はワン・シュエチーという人。「黄色い大地」の人らしい、でも全然顔憶えてない。
孤児の少年はなんと「あの子を探して」のチャン・ホエクー!でもそのまんま大っきくなっただけの、あんまり変わってないような...。

映画としてはそれほどドラマチックでも無いし、キャストにそんなに魅力もないけどね。でも、中国人にとっては忘れられない事実なんだろう。日本人にとっても忘れてはならない事実だから、親中家の人は観ておくべきかもしれませんね。

次回はついに最後のチャップリン映画祭です。