「チャンピオン」

27/Aug./2003

  

土曜日の朝。この日は会社は出勤日だったけど、仕事を休んで映画を観に行く。
やって来たのはOS劇場C・A・P。ここではチャップリン映画祭を上映中。そのために本来ならロードショー公開されてもいいのに、モーニングショーのみで上映されているのが「チャンピオン」2002年韓国。

昨年観た「友へ/チング」と同じ監督クァク・キョンテクと主演ユ・オソンの作品。1970〜80年代、実在した韓国のライト級東洋チャンピオン、キム・ドゥックの生涯を映画化したお話し。
キム・ドゥックは1982年、ラスベガスで行われたWBAライト級世界タイトル戦でチャンピオンのレイ・マンシーニと戦い、そのまま帰らぬ人となった。 ユ・オソンがこのキム・ドゥックを演じる。家を飛び出した少年時代からボクシングとの出会い。そして最愛となる女性との出会い、やがて最後の戦いとなるラスベガスの試合までを描いている。

実話をベースにしているだけに、話の筋もしっかりしているし、役者の演技もいい。ボクシングの試合もなかなかみせてくれる。普通テレビで観る試合って、当たり前ながら遠くからリング全体を見渡す感じだけど、映画だけに臨場感溢れる戦いが観れる。ナカナカ良くできた作品だ。

しかし、この映画には“感動”が無かった。それが凄く惜しい!
キム・ドゥックがいったい何を求めてそれだけボクシングに打ち込んでいたのか? それが今ひとつ伝わって来なかった。
貧しさから家を飛び出したハングリー精神なのか、愛する人の為に戦うそれが自分の愛情表現だったのか。子供の頃の回想シーンもまるで後からとってつけたようなお話しにしか思えない。ボクシングも何時の間にかトントン拍子で勝ち進んでいたし、恋もさほど障壁の無いまま結ばれていたような気がする。最後で涙を流せなかったのも、やはりそれまでの過程で感情移入ができるエピソードがなかった他ならない(と思う)。最後の戦いにかける意気込みが全然感じられなかったのだ。
実在の人物をベースにした話だけに、大胆な脚色ができなかったからだろうか? それならドキュメンタリー映像をナレーション付きで流しているのとさほど感動は変わらんぞ。

役者、題材ともに揃っているだけに、ラストに盛り上がればもっともっと泣けた映画だったのになぁ。実に惜しい作品だ。

ユ・オソンは「チング」よりも今回の方がいいナ。彼もけっこういろんな役できるんやねぇ、これからも期待です。

次回は「戦場に咲く花」をご報告します。