「レセ・パセ/自由への通行許可証」

17/Jun./2003

  

今回はひさびさOS劇場C・A・Pへやって参りました。
ここで観ましたのは「レセ・パセ/自由への通行許可証」2002年のフランス映画。第二次大戦中のフランスはパリを舞台に、映画界に携わってきた二人の男を主人公にした実話ベースの物語だ。

その二人の男のうち、ひとりはジャン・トヴェーヴルという人、彼は助監督。
助監督と監督の違いは何か? それは「監督には責任がある」ということらしいが、その違いだけでやっている仕事は基本的に同じ(“責任が有る”と言う事はつまり“決定権が有る”ということだな)。むしろ監督によっては助監督の方が段取りを組んだり現場に指示したりと陣頭指揮することの方が多い。
しかもトヴェーヴルは助監督という仕事以外に、地下組織で対独のレジスタン活動をしていた。

そしてもう一人はジャン・オーランシュ、彼は脚本家。三本の脚本と四人の女性を抱える人気脚本家の彼も、ドイツ資本の映画制作会社コンティナンタル社からの執筆依頼だけはどうしても受けなかった。彼には脚本家として、己のペンで抵抗するという信念があったのだ。

そんな映画制作に携わる実在した二人に焦点を当てて、当時ナチス占領下のパリで、いかにしてフランス映画が造られていたのか。フランス人として自ら尊厳と誇りを失わず、祖国と映画を愛した人々のお話だ。

しかしこのトヴェーヴルとオーランシュ。二人はひとつの映画会社という仕事上の繋がりがあるだけで、実際劇中で絡むシーンはまったくない。顔見知りではあるから、会社の受けつけで偶然出会って挨拶をしたか、映画の試写で これまた二人とも観に来ていたかぐらいなのだ。
三時間近くに渡るお話なしですが、映画の結末は別に終戦を迎えてハッピーエンドになったわけでもなく、またドヴェーヴルとオーランシュが一念奮起して互いに協力し合い、一つの作品を作り上げたというわけでも無い(後世談では語られますが)。
これといって大きな感動を促すドラマのお話でも無いのだ。
二人の主人公を並行して話し進めるし、次から次へと登場人物が出てくるのでもう誰が誰だかわけがわからず最初はかなり混乱する。結局誰ひとり最後まで名前を覚えられなかったしね(この手のヨーロッパ映画はいつもそうですね)。

それでもお話は飽きる事無く観続けることが出来る。映画好きの人なら、それでなくとも楽しめる題材では無いでしょうか。
実話ベースのお話とはいえ、ドヴェーヴルやオーランシュがそれほど特別な人物であったわけでも無いけど、近年のフランス映画の隆盛に至るまでの歴史には、当時の彼らのそんな努力がもあったからなんやね、と素直に観て感じとれる作品です。
昔のフランス映画作品を知る人には、それこそいろんな名作のシーンや人名が登場してきて興奮の色を隠せないとこでしょうが、さすがに僕はそこまで知らないけどね。

ジャン・トヴェーヴルを演じるのはジャック・ガンブラン、「クリクリのいた夏」主演の人ですね。本作で2002年のベルリン国際映画祭で主演男優賞(銀熊賞)を受賞(ちなみに「千と千尋の神隠し」がグランプリ(金熊賞)です)。
ジャン・オーランシュを演じるのはドゥニ・ポダリデスという人。僕には初顔ですがけっこう映画の出演している人で、個性的なところから助演が多いよ うですね。

ちなみにタイトル“レセ・パセ”とはドイツの検問無しにフランス中を渡れる“通行許可証”の意。
それにしても自転車で片道400km近くの道のりを往復するなんて凄すぎるぞ!

OS劇場はこの後も「D・I」や「サハラに舞う羽根」など、他ではあまりやっていない面白そうな作品が続くので楽しみです。
またチャップリン映画祭も是非観たいですね。

次回は「武勇伝」をご紹介します。