「さらば、わが愛/覇王別姫」

12/Jun./2003

  

さてレスリー・チャン追悼上映も今回は宝塚のシネ・ピピアに場所を写しまして二作品を観賞致しました。シネ・ピピアで映画を観るのは当然今回が始めて。
劇場に入るとここでもまた人だかり、しかしレスリー人気は凄いですね。これならヘタな作品上映するよりずっとレスリー作品上映していた方がいいんじゃないでしょうか? なんて思っていたら、整理券番号が58番だったのに補助席しかあいてなかったとうのには驚きました。

先ず「さらば、わが愛/覇王別姫」、93年の香港映画。
監督はチェン・カイコー、同年のカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した作品です。この映画をどんな内容の話なのかを説明するのは少々難しい。それほどにこの作品のテーマというか、扱っている内容は重たくて長い。大きくわけると“京劇”“現代中国史”そして“愛”という分け方が出来ると思う。

主演はレスリー・チャン。レスリーの役どころは京劇の女形。演じられる劇は“覇王別姫”。「虞や虞や、汝を如何せん」と有名な項羽と劉邦でお馴染みの四面楚歌のお話だ。レスリーは虞姫の役を演じている。
一方で覇王を演じるのは、チャン・フォンイー。レスリーとチャンは幼少時代から京劇役者としてひたむきに修行してきた仲でもある。
特にレスリーは女形を演じるために、男であることを忘れさせられるかのような、厳しい折檻にも耐えてきた。

やがて青年になった二人は、京劇の花形スターとして輝いていた。
そんな中で、幼い頃から共に修行し、ましてや女形を演じてきたレスリーは劇の中だけではなく、いつしか本当にチャンを愛してしまった。しかし、チャンはそんなレスリーの気持ちを知ってか知らずか、行きつけの遊郭の娼婦(コン・リー)とあっさりと結婚してしまう。
レスリーにとって、この行動は裏切りにも思えた。嫉妬からコン・リーに皮肉さえも言うほどだ。
しかしやがて時代は移り変わって行く。日本軍の占領、終戦後の中国国民党、そして共産党の文化大革命。そんな激動の時代に、京劇はどう変わっていくのか、そして三人の愛憎劇は?

近代中国、激動の時代の流れにそって物語りが進む大河ドラマ。その中に京劇、そして愛憎劇という内容が組み込まれている。もちろん京劇のシーンもあります。特に少年時代に脱走し、ふと入った京劇の舞台のシーンは圧巻。
京劇ってこんなにも活気溢れた中で繰り広げられるもんだったんでしょうか。 しかし途中からちょっと時代の流れが急なので、京劇や愛憎劇の部分が少し楽しめなくなります。
特に愛憎劇の部分は同性愛というものの、レスリーが一方的にチャンを愛しているというもので(その起因にはチャンも絡んでいるとはいえ)チャンにはその気は無い。したがって非愛というより、レスリーとコン・リーの女の争いになっている。チャンにそこまでの魅力があるかというとこれもどうかだしね。

それにしてもレスリーの演技は凄い。特に今回は京劇役者の女形として、シーンの大半が化粧した顔なのではっきりいって誰だかわからない。言われて見ればああそうという感じ、それがレスリーだとちっとも感じないのだ。それが凄い、役にはまりきっていて、作品の時代の流れに溶け込んでいて、このレス リーらしからぬレスリーには一見の価値あり!
チャン・フォンイーの演技力は他の映画を観たことがないので何とも言えませんが、少なくとも今回の役柄はあっていると思う。どことなくチアン・ウェンがよく演じている男を感じますね、もう少し繊細な顔をしたシーンもあれば良かったかな。
コン・リーは今回はしたたかで少し腹黒い女を演じています。この人も役者やなぁ。いつものあの物凄く残念そうな悲しい顔、この顔インパクトあります。
他にはグォ・ユウが出てますよ。このひょうひょうとした顔でする演技がまたいいンです。

レスリー・チャンの作品というより、中国映画としてこの作品は観ておくべきかもしれません。
三時間近い時間なので、観るときはしっかり腰を据えて。
京劇にも興味を持てますよ。

次回は続けて観ました「追憶の上海」をご報告します。