「流星」

12/May/2003

  

レスリー・チャンの映画って、これまで観た事なかった。別に嫌いだったわけではなく、観る機会が無かっただけ。初めて観た主演映画、実は遺作になってしまった「カルマ」。
そういえば先日テレビの深夜放送で「色情男女」が放映されていました(この映画はスー・チーが凄かったね)。レスリーの訃報を聞いてもピンとこなかった僕ですが(ゴメンナサイ)、やはり観ておかねばニ度と彼をスクリーンで会える機会もないと足を運びました。

梅田ガーデンシネマで上映されるレスリー・チャン追悼上映。その第1弾は「流星」(99年香港、原題:流星語)。土曜の夜、上映開始30分前に劇場に着いたらすでに人だかりが...。入場券を買った僕の整理券番号はなんと81番。最終的には立見も出る盛況で、しかも9割以上が女性客なのにはオドロキです。やっぱりレスリーの人気は凄い。

さてこの「流星」。
どんな映画かというと1921年のチャップリンの作品「キッド」がベース。浮浪者がひょんなことから赤ん坊を拾い、育てて行くというストーリーだ(たしかそんなんだったと思う)。
そんなお話しを現代の香港の下町に置き換えたている。主人公のウェイ(レスリー・チャン)は証券会社のエリート社員だったが、株の大暴落により顧客に多大な損失を負わせ、一夜にして金・職・恋人のすべてを失ってしまう...。 失意のうちに自宅に戻った彼だったが(船上生活のようだ、戸締りはどうなっているんだろう?)、そこにはなんと赤ん坊が捨てられていた! とまあこんな具合で赤ん坊を拾い、彼はその子を育てていくことになる。
そして4年後、ミンと名付けられたその子は、たくましく成長していた。ウェイはその日その日をいろんなアルバイトで稼ぐ毎日。住んでいるのは中年の女性ラン(キャリー・ン)が経営する老人ホームの屋根裏。細々と貧しかったが、ウェイとミンは幸せな生活を送っていた。
そんな幸せな生活だったけど、最後はやっぱり本当の母親が登場しミンは彼女に引き取られる。
しかしそれにしても、後から登場してくる母親がなんだか変。すでに母親だと観客にはバレてしまっているのはいいが、子供を捨てた理由がわからない。またその後資産家と結婚したということだが、そのいきさつや旦那自身も登場しないのはちょっとヘン。
最後にあっさりと子供は引き取られて、よくわからないうちに話しは終わってしまう。ちょっともったいないね(レスリーの最後の泣き顔は印象に残ったけど...)。

この映画で一番味があるのは、下町のパトロール警官ルン(ティ・ロン)。下町らしくとても人間臭く親身な警官。中年女性のランに恋しており、いつも夜はジョギングを口実に彼女の家へやってくる。
それでいてゴミをあさるウェイを注意する話しや、追われるウェイを知らんフリして見逃すところなど、この作品に彼の存在は大きいね。
この警官ルンを演じたティ・ロン、中年女性のランを演じたキャリー・ンはそれぞれ、第19回香港国際金像奨(99年香港アカデミー賞)で助演男優賞、助演女優賞を受賞している。

お話としては普通だけど、そんな映画もあるんやねとレスリーが子供とほのぼの暮らす生活感が観れる作品。機会があったらまた観てください。
上映が終わって会場が明るくなるまで誰も席を立とうとせず、おまけに拍手まで起こりました。レスリー・チャン追悼上映はまだまだ続きます。

次回は「ミッシング・ガン」をご紹介します。