「ハッピー・フューネラル」

12/May/2003

  

今回は「ハッピー・フューネラル」(原題:大腕、2001年中国・アメリカ合作)を観ました。ハッピーフューネラルとは、そのまんまの意味で「幸せなお葬式」。
いったい「幸せなお葬式」というのはどういうことなのか? 中国では齢70を越えた人の葬式は、その大往生を祝って行うという“喜葬”というのがあるそうだ(この考え方は、仏教の輪廻転生からくるもの)。

この欧米人とは異なる考え方に興味を持ったのが本作のストーリー。
世界的な巨匠の映画監督ドン・タイラー(ドナルド・サザーランド)。彼は今、中国の紫禁城で「ラスト・エンペラー」のリメイクを撮影していた。しかしアイデアに行き詰まったのか、どうも撮影は進まない。“何かちょっと違う....?”と感じていたのだ(名作の「ラスト・エンペラー」も、中国から観ると“何かちょっと違う?”らしい)。
タイラーの助手で、作品のメイキングドキュメンタリーを担当していたルーシー(ロザムンド・クワン)と、その撮影のカメラマンとして雇われたいたのがヨーヨー(グォ・ヨウ)。その3人の雑談の中で、タイラーは“喜葬”という考え方をヨーヨーから聞いた。すっかりヨーヨーを気に入ったタイラーは、自身も歳は70に達していることから、「もし自分が死んだら、君が“笑える葬式”をあげてくれ」とヨーヨーに頼む。それは冗談の域に思えたが、直後タイラーが本当に心臓発作で倒れてしまった!

タイラーが意識不明になり“笑える葬式”が彼の遺言だと信じたヨーヨーは、本当に葬式の準備に取り掛かった。ところが、資金が無い! タイラーには資産が無かった。そこで思い付いたのが、いっそこの巨匠タイラーの葬式を世界中でTV放映し、その広告費で資金を集めるというものだった...。

本作の監督はフォン・シャオガン。日本ではあまり作品は紹介されていないようですが、中国本国ではチャン・イーモウ監督やチェン・カイコー監督よりも親しまれている有名監督らしい。
ヨーヨー役のグォ・ヨウは「活きる」に主演の人。他にも「再見のあとで」「さらば、わが愛/覇王別姫」など国際的にも有名な中国の名優。ダイラー役のドナルド・サザーランドは僕は知りませんでしたが、数多くの作品に出演している名優。ルーシー役のロザムンド・クワンはジャッキー・チェン映画やリー・リンチェイ映画でおなじみの顔。しばらく女優業を休養していたらしい、本作を期にまた再び活躍中とのこと。歳は40を越えているみたいなのにこれまた中国的美人で素晴らしい!

中国映画だけど、ノリはまた今までの中国映画とはまた違う。風刺を利かせた、笑えない話だけど、笑える、そんなコメディ映画。
葬式は何がなんだかわからないくらい広告だらけになってきて、そんな商業主義を皮肉っている。黒社会の人間が裏で手を引こうとしたり、いろんな映画人の名前が出てきて業界をネタにしたような皮肉もあり、それらが面白おかしく描かれている。海賊版DVDを観ることができるプレーヤーのメーカーを思いっきり批判するなど、ホンマにストレート。しかし“笑える葬式”の演出はどんどんエスカレートしてきて、ちょっとやりすぎかな。その為、グォ・ヨウの心がどんどん観客から離れていってしまう。
最後のうまくまとめられたオチはなかなか良かったけど、壮大なハッピーフューネラルという面白さが的外れのまま終わってしまったのは少々残念(どんなお葬式になるのか見てみたかった!)。

フォン・シャオガン監督は今後、ウォン・カーウァイ監督(「花様年華」)や、チャウ・シンチー(「少林サッカー」)と共作する作品が続くようです。
また日本でも公開されるでしょう、楽しみですね。

次回はレスリー・チャン追悼上映会で観た「流星」をご紹介します。