「母と娘」

07/May/2003

  

さて千日前に続いて観たのは、梅田OS劇場C・A・Pにて「母と娘」2000年フィリピンの映画です。フィリピン映画が日本で本格的に公開されたのは昨年の「ホセ・リサール」以来まだ2本目だとか。
原題は「Anak」(アナック)で、これは70年代末に世界的なヒットとなったフィリピンのフォーク歌手、フレディ・アギラーの曲。日本でも加藤登紀子と杉田二郎がカバーで唄ったとか(タイトルは“息子よ”)。曲そのものは、子どもを得た喜びと、その期待に反する道を選んだ子どもへの哀しみを切々と歌うもの。この曲をベースに造られたのが今回の映画。

海外へ出稼ぎに働くフィリピン女性は非常に多い。中でも香港で家政婦として働く女性は“アマ(さん)”と呼ばれている。通常であれば、半年か長くても2年ほどでいったんは帰国するものなのだそうだ。親切な雇い主ならいざしらず、やはり中にはひどり雇い主もいて、ジョシーはパスポートを取り上げられ、もう6年も帰郷出来ずにいた。

マニラに残してきた家族のことを思い続ける日々。家に残してきた幼かった子供たち。
長女のカーラはもう高校生だ。次男のマイケルは優等生として、奨学金を得て私立高校に通っている。そして1歳だった末娘のダダイはもう7歳になっている。
子供たちの面倒は妹がみていてくれたが、愛する夫のルディは事故で数年前にすでに亡くなっていた。ジョシーは夫の葬儀にも帰国できなかったのだ。

そしてようやく、6年ぶりにジョシーは家族のもとへ帰ってくる。
空港で出迎えたマイケルとダダイは見違えるほど成長し、ジョシーは驚きの色を隠せない。しかし帰宅したものの、長女のカーラは姿を見せない。やがて帰ってきても、彼女は一言も話さなかった。彼女は母親を憎んでいたのだ...。 6年の歳月で母親と娘の心はすっかりすれ違っていた。
その葛藤をと和解を描いたドラマ。お話はいたってシンプルだけにわかりやすいが、それだけに素直に感動できるストーリー。

しかしまあ、母親のジョシーがこれまた非常にテンションが高い。
山積みのように持って帰ってきた香港のお土産を皆に配ったり、同じ境遇だった家政婦仲間との会話など、ホンマによく喋る。まるで日本でも見かけそうな近所のおばちゃんだ。でも当然、娘のことを想って悲しい顔をするときもあり、そのギャップがなかなかいい。

娘は娘でこれまたストレートで単純。解り易く実に嫌な役柄になっている。 これがまた墜ちるところまで墜ちていくもんだから、ホンマにこの二人理解し合えるのかと不安になりましたが、最後はなんとか理解しあえる。しかし決して最高のハッピーエンドにならなかったところが、またいいね。カラオケで父親が唄っていた歌を、母親が想い出させるように歌うシーンは良かったな、ここは泣けました。

ジョシーを演じるのは、ヴィルマ・サントスというフィリピンを代表するトップ女優で、フィリピンのアカデミーではもはや殿堂入りとか。自身の会社でプロデューサとしても活躍し、なんとマニラ近郊のリポ市の市長も努めているそうです。

号泣するほどの感動大作ではありませんが、素直に観て感動出来るいい作品でしょう。劇場にも母と娘二人で観に来ている客が多かったです。

次回は「ブラッディ・マロリー」をご紹介します。