「たそがれ清兵衛」

21/Jan./2003

  

今回観ましたのは天六はホクテンザにて「たそがれ清兵衛」、2002年の邦画。昨年末に公開され、口コミでもひろがり大ヒットを記録する話題の映画です。日本アカデミー賞最優秀作品賞も間違い無いことでしょう。

聞く人聞く人が皆「この映画はいい」と言うので、そんなにいいのならと公開から随分たちましたがこの日観に来た次第です。夜20:20からの上映、天六は相変わらずの客入りなんですが、この日は若い人達もちらほら見え、いつもの天六とはまた違った雰囲気に「これはひょっとして?」なんて思ったりしました(まぁでも10人くらいなんですけどね)。

映画は時代劇、時代劇なんだけど、ちょっと違う。僕は時代劇って好きじゃないんですよね。歴史は好きですが、時代劇となるとどうも...。
歴史大河ドラマとかありますが、どうも展開が辛気臭いのか、いつも観ていて(好きじゃないのでほとんど観ないですけど)飽き飽きしてしまう。後ちょっとした事にこだわってしまうんですよね。
戦国時代だと、馬は右から乗るもんだとか(刀が邪魔になる為)、人名を呼びあう時は名前じゃなく官命(役職名)で呼ぶもんだとか(名前で呼ぶのは忌み名といって失礼にあたる)、こだわりだすとキリが無い。また時代劇って、人間関係ばかりの演出で戦の駆け引きとかが全然無い。合戦のシーンなんか1シーンで終わったりして「なんじゃそりゃ!」という具合だ。

とまあ話が長くなりましたが、兎にも角この「たそがれ清兵衛」。
今までの時代劇と違うのは、まずリアリティがあるということ。その話し方、しぐさ、作法...、普段観る時代劇とはまたちょっと違う雰囲気に飲み込まれる。
おまけに主人公の清兵衛は下級武士だ。貧乏武士で刀を売り払ったという話はよく聞きますが、この映画はホントに貧乏さがしみでている。時代劇でよくみかける武家屋敷なんてのはほんとに縁の無い質素な暮らしをしている。それでもって扶持が50石とこれまたリアリティのあるお話し。

次に時代劇ではおなじみの殺陣のシーン。
時代劇でよく観かけるような、斬ったのかどうなのかわからないような降り方でバッタバッタと倒して行く、そんなもんじゃない。生きるか死ぬかの生死をかけた斬り合い、そんなにさっそうと刀を振り回して相手を斬れるもんじゃ無い、もっと生に執着した真剣さが有る筈だ。この映画の殺陣はそんなところが写し出されてます。“突き”から始まる侍の戦い方も、これまた僕にとっては驚かされる。

とまあこんな具合に、時代劇嫌いの僕も集中させられた内容。
それにまたお話もまた当時の幕末がどうたらとかわかりきった話では無く、歴史的に観るまでも無いようななんでも無いただフツーの話だ。それでも感動させられる、いいお話。
感動の面ではそれほど大きなものは呼び起こされなかったが(といっても最後のクライマックスで宮沢りえが飛び出してきた時にはびっくりさせられたようにドッと涙があふれてきました)時代劇としてとても優れていて、なかなか惹かれました。

昨年一番の邦画、日本人として一度は観てもらいたい作品ですね。
機会があったらまた観てください。

それではまたゴキゲンヨウ