「AIKI」

20/Jan./2003

  

ようやく観て参りました今回の映画、「AIKI」2002年日本。
日活の創立90周年記念作品のひとつで、90周年ってこれまた凄いですよね。シネ・リーブル梅田で20:50回からのレイトショー上映、日本語字幕付きです。

この映画のキーワードとなるのは、“車椅子”と“合気”でしょう。
不慮の事故で下半身麻痺となり、車椅子での生活となった青年がやがて合気柔術に目覚めるというもの(合気道では無く、大東流合気柔術だそうで、流派が異なるようです)。これはデンマークで実際にあった話で、その方は当然今直も健在、なんと黒帯ということです。

主人公を演じるのは加藤晴彦、最初この映画の予告編を観ていた時には、このキャストにはいささか懸念するものがあったんですが、まぁ実際観て見るとそう気にすることもない(というより主人公がそうたいそうな性格では無く、演技に深さがあまり必要無い、ただ上半身だけの動きで演技をしないといけないのでたいへんだ)。
ヒロインはともさかりえ、その他に脇を固める役者に石橋凌、火野正平、桑名正博などなかなかいい感じです。また永瀬正敏、佐野史郎、ミッキー・カーチスなんかがチョイ役で出て来たりして、思わず笑ってしまいます。

ストーリは単純、ボクシングに情熱をかけていた芦原太一は、バイクの事故で下半身麻痺の身体となってしまった。
車椅子での生活を強いられた彼は、恋人も友人も拒絶し自分の殻に閉じこもり、やがて自殺を考えようとする。20代前半のまだまだ若い青年、突如ふりかかったこの現実に、逃げ出したくなるのも無理はない。やがて彼は自殺を踏みとどまったが、退院してから自暴自棄な生活に明け暮れることとなった...。

これまたこの芦原太一の性格が、粗野で自分勝手、おまけに喧嘩っ早いと僕なら絶対友達になれないような奴だから、映画を観ていて腹が立つ。
当然劇中の相手も同じように腹が立っているんだが、相手は身障者だ、暴力に訴えるわけにもいかない。いや身障者だろうが健常者だろうがひとりの人間、区別すべきでは無い、それが正しいものの観方だと考えるところもある。こういう時ってどうすればいいんでしょうね、そういえばそんな映画去年にテアトルで上映してましたね。まぁ僕は深く考えずその時の感情にまかせることにしてますが。

さてそんな彼もやがて合気柔術に出会い、やがて自分をとりもどしていく。いいお話ですよね、でも彼は相変わらず(僕は)友達になれない奴だし、一生懸命なところが今ひとつ観えてこない。この懸命さをもっと演出してほしかったかな、本気なのかどうかわからないし、やっぱり加藤晴彦だからかな。いやこれが今時の若い人達かもしれない、そういった意味では現実的だ。あんまり合気柔術ばかりにこだわってると違う映画になってくるしね。

合気道にしろ、合気柔術にしろ、ちょっと手を動かしただけで相手がポテッと倒れるもんだから、ホンマかいな?と誰しもが思うところでしょう(やってる人いましたらスミマセン)。やっぱりその辺のところはこの映画でも同じで、特に最後の試合は今ひとつ。せめて同じ柔術の試合にすればよかったのに(そんな試合やっぱりないのかな)。

とこんな風に映画は割と長い時間なんですが、それほど苦にするところも無く、時間が長いだけあってなかなか造りこまれてますね。
そう涙を流すほどの大きな感動をすることはないですが、いいお話ではあります。そう大きな期待をしていた訳ではありませんが、その通りの期待を裏切らない加も無く減も無い映画でした。

日活では今度「僕のスウィング」というフランス映画を観て見たいと思います。
それではまたごきげんよう。