ボルベール<帰郷>

激しく、切なく、そして逞しい



  

「オール・アバウト・マイ・マーザー」を観たのは00年のこと、梅田のテアトルだった。この作品で初めてペネロペ・クルスにお会いした。
次いで「トーク・トゥ・ハー」は03年の夏、博多のシネ・リーブルで観た。福岡アジア映画祭をに参加するために福岡へお邪魔したときに観たんだったなぁ...。
で、今回も福岡で観るペドロ・アルモドバルの新作。主役はペネロペ・クルス。前2作を含めて女性賛歌三部作となっているそうです。

何とも激しく、切ない。
出てくる男どもは情けなく、女性人は誰もたくましいのだ。

この作品、ペネロペが主役なのは間違いはないのだけど、実は、彼女の妹ソーレ(ロラ・ドゥエニャス)こそが主役なのかもしれないな(この方「海を飛ぶ夢」でも存在感たっぷりでしたよね)。
めまぐるしく場面が切り替わり、お話しが交錯する。今まで追っていた本題がいつの間にか伏線となり、長い時間の流れの中で、今のことはまるでどうにでもなれ、ほんの些細なことに過ぎないと思えてくるのだから、不思議な気もする。

親戚の葬儀に生まれ故郷に戻る。すると、もう死んでしまったと思っていた母親がひょとしたら生きているのかもしれないという話しを耳にする。一方、自分の娘にちょっかいを出した自分の旦那を殺してしまう。それを隠すために、閉店して売りに出ている近所のレストランを勝手にオープンさせてしまう。そして、母親と出会い...。

ここで描かれるのは、一つ。それは、女達の機知とたくましさ。
ボクはお話しに付いていくのに精一杯で、余韻を楽しむゆとりはない。「なんでやねん」と考えるいとまもまるでない。

また、圧倒的な色彩感覚に酔いしれることも可能だ。明らかにボクが持っているものとは大きく異なるこの感覚は、映画で観るのにこそふさわしいと思わずにいられない。

観て楽しい作品なのかと問われると、答えは否なんだけど。もちろん、楽しいのか楽しくないかだけが映画の価値観ではない。そんな一方的な観方しか出来ない方にはオススメできないけど、様々な価値観を存在を認めることが出来る方にはオススメできるお話しだと思います。
但し、東宝のメジャー館で公開する映画でもなかったような気がするのは、ボクだけでしょうかね?

おしまい。