明るい家族計画/Mission : Sex Control

爆笑して、その後が物悲しい。



  

福岡へは年に一度は出張で来ているけれど、この「福岡アジア映画祭」にお邪魔するのは2002年、2003年に連続して以来。そんなに間が空いているとは思わなかったけど、4年ぶりなんやなぁ。その間に空前絶後(?)の韓流ブームがやって来ていた、そう思うと、今(2007年)は、そのブームもかなり落ち着いている。
会場の夢天神ホール、確か初めてお邪魔したときはまだ「イワタヤZ-side」という名前の建物で、同じフロアには書店さんが入っていた。2003年には書店さんが撤退していて、今回は「Z-side」ではなく岩田屋の本店になっていた。う〜、時は確実に流れているのだな。

まず一本目は、芸達者のイボムスとキムジョンウン主演の“考えさせられるコメディ”。今回は極力上映作品の情報に触れないないようにしていた。それだけに素直に拝見して、素直に喜べて、面白かった。韓国で大ヒットしたというウワサも聞かなかったことを思えば、(出演者が)少し地味であったのかとも思うけど、なんのなんの、楽しめる佳作。拾い物です。
いや、考えてみれば、この作品をセレクトしたこの福岡アジア映画祭にディレクターの慧眼に恐れ入ります。はい。

現代は、晩婚や小子化、核家族化などが話題として取り上げられ、女性が生涯で何人の子供を産むのかその指数が話題となる。そりゃそうだ。自分で生きるのが精一杯で、結婚したり、子供を育てていくことが如何に困難なことなのか、言葉にしなくても潜在的に誰もが理解している。さらに、個人主義に走る中で、自分自身の生きがいにのみ心血を注ぐことも珍しくともなんともない。
また、どんなに一生懸命愛情を注いで子供を育てても、その子供たちが希望に満ちた可能性の中で成長できるのか? それどころか、不幸を背負って生きていかななければならない可能性の方がウンと高いのではないか。それならば、敢えて子供を持とうとしないのも理解できないこともないか...。
結果として、日本では昨年(2006年)から、とうとう人口の減少が始まっている...。

が、1970年代前半は違った。
高度成長時代を目前に控え、食糧自給率もガンガン低くなる中、人口の抑制が国家の重要な施策の一つになっていたのも不思議でも何でもない。親は子供を一種の保険として捉えていたふしさえもある...。

(まぁ、前置きはこれぐらいにして...)
大地主制度が色濃く残っている農村でのお話し。農民たちは大地主でもある村長に、土地を借り、農具を借り、もちろん借金もして爪に火を燈すような暮らしでその日その日を過ごしていた。
そんな農村に政府から派遣された先生がやってくる。どんな話しをするのかわからないが、事前の通達により、村長は広場に村民を集め、先生の到着を待っていたのだが...。
そのパク先生こそキムジョンウン。パク先生を街まで迎えに行く役をおおせつかった村人ソックがイボムス(その奥さんスニにチョンミソン/この人は「八月のクリスマス」でジョンウォンの初恋の人であり「殺人の追憶」でガンちゃんの彼女だった!)。村長にビョンヒボン、村長の息子にアンネサン(この人、脇役ばっかりだけど本当に上手い!)。
イボムスとキムジョンウンがいかに芝居が上手い役者さんかがよ〜くわかりますね。

爆笑して、その後が物悲しい。
少々やりすぎてしまいがちな、韓国の方の国民性も見え隠れして、興味深くもあります。日本であれば「まぁまぁ、ここは...」となるところも、ガンガン行ってしまうのだ。
88年のソウル五輪を迎え、韓国は劇的な経済成長を遂げる。そんな中、もはや、人口や食糧事情は問題ですらなくなってしまう。あんなに必死になって人口抑制、出生率低下を啓蒙したパク先生やソック。もし今も生きていたら、今の韓国を見てどう思うんだろうなぁ...。
政府や役人が打ち出す方針は、所詮いい加減なもの、100年の計の政策なんてありはしない。そんないい加減な方針で苦労をするのは、純朴な庶民ばかりだという事を伝えたかったのかもしれませんね。
もう10年もしたら、大陸から“一人っ子政策”を揶揄したような題材の映画がやって来るのかな?

10代後半や20代前半ではこの映画は楽しめないかもしれない(いや、そんなこともないか?)。
でも、キーとなるテーマはさておき、映画の作りとしては秀逸で、もっと多くの人にご覧頂きたい出来だと思いました。

あんにょん。