愛された記憶

「明日は雨になるらしいいね」



  

何の前情報も持たずに拝見した。
インパクトは強烈。後に尾を引く強烈さだった。
ただ、惜しいなと思ったのが、物語りの視点があくまでも安心(ヴィッキー・チャオ)の視点で描かれている点で、毛傑(ニコラス・ツェー)から語られることがなかった点でしょうか。そのせいか、もう一つお話しに深みが無かったような気がします。

しかし、お話しは良く出来ています。
実に様々なテーマが語られていて消化不良に陥りそうでいながら、際どく踏みとどまり、しっかり語りたいことは語っています。
人間とは何とも哀しい生き物なんだなぁ。その時、その時は正直に生きていたのに、結果として様々な裏切りをしながら生きているのだから。

現代の北京。プレイボーイのお兄ちゃん。自分が稽古しているテコンドー教室にワケ有りそうな美しい女性がやって来たのを知り、なんとか篭絡しようと、あの手この手を繰り出すが...。
一方、中国南部の雲南省。女性麻薬捜査官をしている安心は、離れた街に新聞記者の恋人を残して赴任している。安心が勤務する地方は麻薬取引が盛んに行われている。そんなある日、安心は街角で素敵な青年・毛傑と出会い、最初はおそるおそる、そしてそれからは一直線に恋に落ちる。
そして、ある日、安心は囮捜査に参加することになる。それは大河を渡る乗り合い船の中である言葉を符牒にして麻薬の取引をするというものだった。やがて、船は動き出し、もう少しで対岸に着くというところで耳にした符牒を話しかけてきた男は...。

調べてみると、このお話し、大陸でベストセラーになった「玉観音」という小説の映画化だったらしく、さらにTVドラマ化されたこともあるそうです。なるほどなぁ、だからこの映画はある意味ダイジェストなんだ。ご覧になる多くの方は、お話しの大筋を予め知っていて、それがどう料理されているかを楽しみにこの映画を観るわけだ。そう思うと、初めてこのお話しに触れるボクには少々喰い足らないのも仕方ないかもしれない。

今までヴィッキー・チャオは可愛いだけでコメディにしか用事が無いちゃらちゃらした役が多くて、あんまり演技は上手くないのかと思っていたけれど、この映画ではなかなかの芝居を披露してくれていて、見直しました。これなら「緑茶」も観れば良かったかな?

結局、褒めているのかけなしているのかよくわからなくなってきましたが、チャンスがあれば一度ご覧になられても損はしない一本だと思います。
それに、まだ行ったことはないけれど、雲南省に行きたくなります。
劇場公開はあるのかな? 少なくとも日本語字幕付きのプリントがあるのだから、どこかで上映されるチャンスはあると思います。

おしまい。