王の男

生まれ変わっても、旅芸人でいたい



  

「大阪アジアン映画祭2006」のクロージングは韓国で観客動員1,000万人というとんでもない数字を打ち立てた「王の男」(もっともこの数字は「グエムル」にあっさり破られている)。ボクも昨年(2005年)の暮れにソウルで拝見しています。
結果論で云えば、この「王の男」も「グエムル」も日本での興行成績はもうひとつだった。こうして冷静になって「王の男」を日本語字幕付きで観てみると、その理由もわかったような気がした。
誰にでもわかる理由としては、いわゆる日本で人気が高い韓流スタアが出ていないこと。もうひとつ、漢江(ハンガン)とか燕山君(ヨンサングン)という韓国では馴染みというか常識でわかっているであろう背景が、日本人には全く馴染みのない存在であったことではないだろうか。普段、良く知って慣れ親しんでいる川に怪物が出現するからこそ面白く、歴史上で誰でも知っている国王の新しい解釈だからこそ興味深いのだろう。これが多摩川のタマちゃんだったり、イヌ将軍の徳川綱吉とか吉宗なんかだと(まぁそんなことは有り得ないんだけど)、日本でもそこそこ動員できたのかもしれない。だからこの結果もある意味仕方ない。親しみが無かっただけのことであって、ソンガンホ、パクヘイル、ペドゥナやチャンジニョン、カムウソン、イジュンギの演技が否定されたのではない(と思う)。

何度でも言うけど、日本語字幕は偉大で凄い。そうか〜、目からウロコ。そんなことの連続。特にラスト、ソウルでどうしてみんなが涙ぐんでいたのかよ〜くわかった。
ソウルで観た時の感想の冒頭に“同性愛のお話し”と書いているけど、それは画像の表面的なことしか理解できていなかったのだとわかった。確かに同性愛についても描かれてはいるけど、それは背景の一部にしかすぎない。この映画のテーマは“(権力への)挑戦と普遍的な愛”ではなかろうか。そんなことが、今更わかった(遅すぎるけど)。

日本ではヒットしなかったけれど、いろんな意味で“語り継がれる”作品だと思う。
いつ野垂れ死にしても不思議ではない旅芸人。それが宮廷芸人まで登り詰め、その地位に安住したりしがみついたりせず、王とは一線を画す、いや、ある意味対等であろうとする。その心意気にしびれる。
ジャンセンは最後にこう言う「生まれ変わっても、旅芸人でいたい」と。

イジュンギは今度は日本の作品に出演する。でも、実は「僕らのバレエ教室」のドンワンもオススメです。カムウソンは次どんな作品なのかは知らないけど、ちびっと難しい立場だな。上手く選ばないと、何時までも“「王の男」のカムウソン”となりかねない。
チャンジニョンやユヘジンも凄くいい。でもこの二人は既に高い評価を貰っていた人たちだからね、心配はいらない。

だからと言うわけではないけれど、チャンスがあれば多くの方にご覧頂きたい、そう思った。
まだ探せばスクリーンでの上映はあると思うし、そう遠くない時期にDVDやビデオも出るだろうしそこまでお待ちになられてもいいと思います。

おしまい。