ライフ・オン・ザ・ロングボード

一度でいいから種子島へ行きたい!



  

一年か半年ほど前に東京へお邪魔していたとき、どんな映画やってるかなと調べた。そして「こんなんやってんにゃ!」と発見したのが、この「ライフ・オン・ザ・ロングボード」。
そんなこともすっかり忘れていたらナナゲイでこっそりと上映されている。それじゃぁと、人間ドックを受診した足でこっそりと出かけてきました。

あんまり上手く描けてはいない。でも、今まで不器用に生きてきた男が、初めて手にした自由(=早期定年退職)のなかで、これまですっかり忘れていた青春時代の思い出を取り返しに行くという物語りは、悪くない。
でも人間模様がわかりにくい。
米倉一雄(大杉漣)が今までどんな会社員でどんな父親で夫だったのか。下の娘優(大多月乃)が嫌悪感とは行かないまでも父親を避け、面接では激高するのは何故なのか。一雄の父親はどんな風に生きたいと思っているのか...。
いずれも明らかにはされるのだけど、エピソードをつなげてみせるだけではなく、もう少しスマートに、何気ないカットで観客に知らせる演出方法があったのではないかと思う(上手く表現できないけど)。そうしないと、一雄とその周囲の関係が全く伝わってこない。だから、一雄はいわゆるステレオタイプのオヤジなのかなと勝手に想像するしかない。

で、どうしてサーフィンなのか。そしてその場所がどうして種子島なのか。もっと言えば種子島まで何の下調べも準備もせずに押しかけて行ってしまうのか。
もちろん、これらについてもいろんな説明はされるのだけれど、説得力が全くない。だから、理解できない。
必然があって行動があるはず。これが10代や20代の若者のお話しなら、思い込みや勢いで済ませられるかもしれないけど、50を過ぎたおっさんならそんなこともないでしょ...。

お話し自体は決して悪くない。爽やかだし、自分もこうして生きてみたいなとすら思った。それに悪い人が出てこないのもいい。ただ、お話しの練り方や演出の巧拙が問題なんだな、きっと。
大杉漣はもう少し真剣にサーフィンのお稽古をしたらどうだったんだろう? これも説得力がなかった一因かな(それともリアリティありすぎ?)。あの腕前でよくぞあの伝説の波へ挑戦したものだ。
しつこいようだけど、もう少しお話しを整理して味付けを変えれば、きっと共感を呼ぶ作品に仕上がっただろうになぁ、惜しい!

ラスト。一雄が運転する軽トラがボードを積んで、海岸沿いのサトウキビ畑を見渡す一本の道をどんどん遠ざかっていく。このシーンはとっても良かったなぁ...。
残念ながら、とうの昔に上映は終わっています。そのうちビデオかDVDになるでしょうから、そちらでお楽しみください。
同じサーフィン物でも若者たちの物語り「キャッチ・ザ・ウェーブ」をとうとう観逃してしまったのは残念。竹中直人の怪演を見たかったのにな...。
そう言えば、何年か前に種子島へ行くチャンスがあったのに、その仕事が流れたのは残念やったなぁ(すっかり忘れていたけど...)。

おしまい。