好きだ、

17という数字の意味



  

続いて、渋谷を山手線の内側まで移動する。金曜の夜のこのあたりは凄い人。新入学生の歓迎会や、張り詰めていた緊張をちびっと解きたい新社会人のみなさんが街へ繰り出して、居酒屋やカラオケ店の前には凄い人。う〜む、日本は平和だなぁ。
ここも新しく出来たらしいスクリーン。ボクはもちろん初めて。三つスクリーンがあるけれど「好きだ、」が上映されているスクリーンは想像以上に小さい。つくりは銀座のシネパトスの一番東側を角度を付けて天井を高くしたような感じ(どんな感じやねん!)。いかにもミニシアターって感じですね(?)。
この回が、最終日の最終回。レイトだし、空いていると疑ってなかったけど、結局補助席(?)まで出されて超満員でしたね、びっくりしました。

その昔、南沙織というアイドル歌手(?)がいて、その人が「17才」という曲を唄っていた。その当時ちょっと流行ったし、ここ数年のうちに誰かがカバーで出していたからご存知の方も少なくないかな。
“誰もいない海 二人の愛を 確かめたくて あなたの腕を すりぬけてみたの〜♪”

その時、ボクはまだ子供で「17才になるとこんな恋も出来るのかなぁ」なんて夢見ていた。でも、ボクの17才はボールを追いかけるだけで終わり、何もなかった(っちゅうこともなかったか...)。そしていつの間にか、その倍の34歳も過ぎ去り、今となってはその3倍の51歳の方に近いんだから何だかイヤになってしまう。17歳とは、きっとボクだけではないと思うけど、何か特別な甘酸っぱい数字なんですね。

お話しそのものは正直言って「大したことない」。
でも、17歳を演じる宮崎あおい、瑛太がいい。それに、34歳の西島秀俊、永作博美もいい。それに、タイトルが「好きだ、」という最後に句点が付くのもいい。この句点に深い余韻を感じるのはボクだけなのかな。

映画って、見せても見せなくてもいい。どれだけ観る側に想像させるのか、それが大切。全部見せてしまったら、それは「押し付け」になってしまう。そう考えると、この作品はあんまり見せない。
17歳の部は、その視点が主に宮崎あおい演じるユウに置かれている。お姉さんが流しの前に立ち、その後ろの部屋でユウがいろんな表情をして佇んでいる。でも、彼女はあんまり喋らない。幾つもの異なるカットで見せるこのシーンは、そのままユウの心象風景。
34歳の部では西島秀俊演じるユースケの視点で描かれる。そして、なかなか引越しが出来ない、モノがないアパートの一室がユースケの心を象徴しているのではなかったのだろうか。
この際、ストーリーはどうでもいい。
過ぎ去ってしまった自分の過去をちびっと重ね合わせながら観るこの映画は、切なく美しい。

17歳の部の舞台はいったいどこなんだろうと思っていたら、秋田県の大館だったようですね(エンドロールに出てきた)。なんかとっても趣がある素敵な街でした(昨年出張でお邪魔したのに、ちっとも気が付かなかったのが残念)。

オススメかどうか微妙だけど、ボクはごっつい楽しめたし、なんだか昔見た夢をもう一度見せてもらったような気がしました。まだ映画館で上映されているか微妙だけど、人によっては深くいつまでも記憶に残る作品だと思います。

ソンイェジンやムングニョンもいいけど、宮崎おあい、瑛太はこれからも注目していたい。この作品には出てないけど蒼井優も好きな俳優さん。これからどんなふうに変わっていくのか楽しみです。

おしまい。