GiNGA/ジンガ

こりゃブラジルには勝てん



  

渋谷には知らない間に新しいスクリーンがオープンしたり、名前が変わったりしている。もともと渋谷には詳しいわけではないけど、こんなにたくさんミニシアター系の個性的なスクリーンがあるのはいいなぁ。
今回お邪魔したのは、東急のBunka-muraから「松濤局前」交差点を南に折れ坂道の途中にあるQ-AXビル。ここにはQ-AXシネマとシネマヴェーラ渋谷と移転してきたユーロスペースが入り、合計5つのスクリーンがある。ボクが行ったのは、1階にチケットブースがあって、地下と2階にスクリーンがある「Q-AXシネマ」。
このビルの難点は、三つの映画館のチケットブースが別々になっていることでしょう。ここに来る方は、ようやく辿り着いて、切符を買おうと思ったら「その映画は売ってません」ってことになる。1階のチケット売り場に座っているお姉さんやお兄さんは、毎日何十回も同じような繰り返しで無愛想になるだろうけれど、映画を観に来る方は自分が目指してきた映画館が入っているビルに違う映画館が同居しているなんて思いもしないから、この無愛想な対応に「ムッ」としてしまうのも無理はない。1階のチケットブースはQ-AXシネマ専用とせず、3館合同のブースにするべきだと思うな。

そんなことはさておき、この映画を観ると「サッカーが観たくなる」のではなく「ボールを蹴りたくなる」。すなわち、自分でサッカーをしたくなる。それは間違いない!

この映画のタイトルになっている「GiNGA(ジンガ)」とは何か?
「ポルトガル語で揺れるという意味があり、狭義では、フットボールにおけるフェイント時の足さばきのこと。あるいはカポエイラの基本動作を言います。広義では、ブラジル人特有のしなやかでリズム感のある身体性そのものから、心の拠り所としての象徴的な言葉として、ブラジルではごく一般的に使用されています」(公式web-siteより)
そうかぁ、ボクのような東洋の島国育ちのおっちゃんには備わっていないものなんだなぁ、ジンガって。言葉そのものも聴き慣れない。まだ、マリーシアなら知っているのだけど...。

しかし、ブラジルという国でサッカーが置かれている立場の凄さがわかる。
裾野の広さはもちろんのこと、ちょっとしたスペースとボールさえあれば大勢の人が楽しめるサッカーはブラジルの人にとってもっとも身近な遊びなんだ。極端な話し、スペースは必要ではなく、道路でも廊下でも空間があれば、その瞬間にそこがサッカー場に早変わりしてしまう。
もちろん、いろんな人がいて、このストーリーとサッカーでも天才的なテクニックを披露するすばしっこい少年もいれば、ブラジル人でも肥満気味だったりドン臭そうな子どもいるんだな。思わずそんなことを再確認してしまう。

10名ほどの人物を追いかけるオムニバスのドキュメンタリー。
テクニシャンの男の子がビッグクラブの入団テストを受けたり、進学校に通う高校生がフットサルやサッカーで活躍する姿を描く。一方、ビーチフットやリフティング大会に熱意を燃やす女の子や、アマゾンの奥地に住む人たちが船で4時間もかけてアマチュア選手権の大会に臨む姿も描かれる。
そこにあるのは、サッカーは特別な存在ではなく「どこにいてもそこにある」ものとして描かれ、楽しむだけなら誰だって楽しめる、とても身近な存在になっている。
しかし、プロとしてメジャーなクラブと契約するのはなかなか難しい。センスやテクニック、身体能力だけではなく、運や縁にも大きく左右される。また、サッカーが上手いとかプロとして認められるという基準が曖昧模糊としていて、クラブによって時として違う。だから、能力がある(と信じている)多くの少年はいろんなクラブのトライアルを受けるんだ。
もうすぐワールドカップ。このドイツ大会のピッチに立てる人は「氷山の一角」どころか、砂浜にある砂のなかのほんの一粒にしか過ぎないんだな...。

それはともかく、久し振りにボールが蹴りたくなる。
楽しいだけではないけれど、どれだけブラジルでサッカーが楽しまれているのかが、本当によ〜くわかる映画だと思います。これを観ると、日本がブラジルの勝つのはちびっと無理かなって思ってしまいますね。
誰がご覧になっても楽しめるかどうかは...、ちょっと不明。それに、結局、ジンガが何かっていうのはあんまりわからなかった。

おしまい。