忘れえぬ想い

DY1314



  

中国語で「汽車」は、日本語では「バス」のこと(ちなみに、日本語の「汽車」は「火車」)。
ボクは普段の仕事での移動もバスを使うのが大好きだけど、日本ではバスってどちたかというとマイナーな交通手段だと思われている(地域差も大きいと思うけど)。でも、アジアの国々ではバスは庶民の乗り物で、地域に密着した親しまれている乗り物。
「小公共汽車」比較的発音が長い単語を容易に覚えられなかったボクだったけれど、この「シャオコンゴンチーシャ」はすぐに覚えた、そしてどの街でもよく乗った。もちろん、香港でも!

甘いお話しだ。
気持ちはわかるけれど、お話しが進むにつれ、あちこちに説明不足のほころびが目立ち始める。しかし、最後まで破綻を見せずに一気に突っ走れたのは、セシリアチャンとラウチンワンの熱演のおかげでしょう。

大型のバスではなく、ミニバス(「小公共汽車」や「マウルバス」)は企業が運営していると言うよりも、個人がやっているのだろうなと思っていた。その分、小回りがきいて、スピードもガンガン出す。ほとんどの場合、運転手も車掌も制服は着ていない(もっとも大きな路線バスでも、制服を着ている運転手をあまり見たことないか)し、呼び込みに余念がない。乗る側は、次に出発しそうなバスはどれかを的確に選ぶ選択眼が必要になる。この手のバスは、基本的に満員にならないと出発しないのだ。
そして、この映画の舞台はミニバス。そうか〜、こんな世界だったんや!

シウワイ(セシリアチャン)は、ミニバスのオーナー兼運転手のマン(ルイスクー)と口を利くようになり、やがて愛し合うようになる。結婚して、彼の連れ子ロロ(原島大地)も一緒に住む家も確保した。そして、結婚を目前にしたある日...。
セシリアは残されたロロを引き取り、新居に住み、そして自分がバスを運転して稼いでいくことを決意する。しかし、女だからなのではなく、運転にも慣れていない者にとって、ミニバスで稼ぐのは生易しいことではなかった。この日からセシリアの悪戦苦闘が始まる。
ただ、日々運転することだけでも大変なのに、慣れない家事に子育て、そして経済的に一家を支えていくことは想像を遥かに超えていた。それでも、家族の助言や申し出を頑なに拒み、自分の腕だけで、マンが残したものを守っていこうとするのだが...。

あちこち綻んでいるのに、そんなことはわかっているのに、知らず知らずのうちに物語りの中へ引き込まれてしまう。思わず「上手い!」。

そして、いつの間にか忍び寄っている(?)、ファイ(ラウチンワン)の影。これが下心見え見えなら、ゲスな野郎にしか過ぎないのだけど、ファイ自身がスネにキズを持っているだけに、付かず離れず、最初は影から、その後も控えめに距離を置いて見つめている彼の姿に好感が持てますね。「あゝ、ラウチンワンってこんな役もこなせるんや」って、密かに驚いてしまいました。

何度も言いますが、ストーリーはところどころが無骨。でも、視線の優しさと演技の的確さのお陰で、素晴らしいお話しに仕上がっていると言えます。人によっては涙なしにはご覧になれないかもしれません(ボクは泣かなかったけど...)。
いつの間にかナナゲイでの上映も終了してしまいました。でも、ビデオやDVDでご覧になっても十分お楽しみいただける作品だと思います。武侠ものやアクションものもいいけど、やっぱり心温まるこんな庶民の人情モノもいいねぇ。さぁ、今すぐ香港へ行ってミニバスに乗ろう!(乗りたいよ〜!)

おしまい。