ロマンス/The Romance

観ていて、息苦しさを感じる



  

この先どうなっていくのか、その展開がある程度読めてしまうだけに、悲運(?)に向かって一直線に転がり落ちていく二人を見守らなければならないのは、辛く切ない。

最初は、どうもお話しの流れについて行けず「あれれれ?」と思う。冒頭のシーンなぞは「インファナルアフェア」そのままのような感じ。
数10分過ぎたあたりからようやく、(映画もボクの頭も)こなれてきて、お話しの輪郭がはっきりしてくる。

刑事のヒョンジュン(ボクのお気に入りのチョジェヒョン)、彼が主人公。仕事にも過程にも恵まれず(?)、彼自身も自我の崩壊が秒読み状態。おまけに口うるさく出世しか頭にない署長(ユンジェムン)にののしられ、頭が上がらない。
ある晩、(たぶん)公衆の面前で妻を殴ったという理由で、政治家とその妻が署まで連行される。旦那は携帯で弁護士と喋りっぱなしで、事情聴取にさえ応じようとしない。そんな様子を横から見ていたヒョンジュン。放免される夫婦が別々に帰る光景を窓から見ている。放心状態の妻の横顔にはどこかで見覚えがある、あれは何時で何処だったのか...。

どんな形をしていようと、どんな境遇であろうと、家庭を持っている男と女が出会い、そして愛し合うことは許されないのか...。許されることがない愛であるがゆえに、二人は燃え上がる。見ていてこちらがヒヤヒヤしてしまうほど、心情の吐露がストレート。お互いに分別が付いていそうな年頃なのに...。
しかし、蜜月の甘美な時間は長くはない。盛り上がったら、後は坂道を転がり落ちていくかのように一気に崩壊していくしかない。

その崩壊の過程が、アクションであり、ドラマチックなんだけど、この部分の処理(表現)にいささかの問題がある。これはもう風呂敷を広げすぎで、ここまでしてしまうと興醒めしてしまう。やはり物事には限度というものがある。
そこまでかろうじて保っていたリアリティの壁がたやすく破られ、安物のアクション活劇風な味付けになってしまうのは惜しい。

ヒョンジュンの相手役にキムジス。ヒョンジュンの上司(班長)にキジュボン。特殊舞台の隊長にアンギルガン。そして麻薬の売人など脇もなかなか芸達者が揃っています。

もし、もう少し味付けを変えていたのならば、ひょっとしたら大化けしていたかもしれない。ストーリーだけではなく、描かれている展開や人物描写が全くのステレオタイプ。本当はもう一皮剥け、意外なストーリーの展開の中で韓国社会への問題定義をするくらいの度胸が欲しかった(と、言うことは、キムギトク監督に期待するしかないか)。すなわち、「不倫」であっても、結局二人が結ばれるという、従来のセオリーを覆した結末が欲しかった。

しかし、今回の訪韓で拝見した作品の中で一番面白かったのも確か。
日本での商業的な上映はちびっと難しいかもしれないけれど、どこかの映画祭では上映されることがあるかもしれませんね。お時間が許せばご覧になってもいいかもしれません。

これで、この春に釜山とソウルで拝見した映画の紹介はおしまいです。
幾ら狭間の期間でいわゆる大作は上映されていなかったにせよ、全体的な低調間は否めませんでした。でも今後もどんどん大作や話題作が待機中。これからに期待しましょう!

おしまい。