青燕

もう少し爽やかに描いて欲しかった...



  

ソンネで泊まったのは仁川空港の観光案内所で紹介されたモーテル。
ソンネのロッテシネマで映画を観るのに決めていたので「駅の近くで、インターネットが使えるモーテルをお願いします」とリクエストを出し、二軒目に紹介してくれたところで決めた(一軒目は電話に出なかった)。残念ながらインターネットサービスはありませんということだったけど、それは仕方ない。街には幾らでもPC房がある(実際にメイルをチェックするだけなら1,000ウォンほどで利用できた)。
駅からも映画館からも近かったし、翌日はちゃんと荷物も預かってくれたけれど、まぁあんまり普通の人は泊まらないかな。そんな感じのモーテルでした。
ソンネは仁川空港から直通のバスも出ているからそれなりに便利。ソウルへも地下鉄1号線で40分ほどだしね。何も無いけど、ソウルのベッドタウンで、庶民の暮らしの一端を垣間見ることはできます。昨年も紹介した“タッパル”というものごっつい辛い鳥の足の唐揚屋さんも健在で、寒い中深夜まで行列があったのには、ちびっと驚きました。
ロッテシネマは駅前にある“TOONA”というファッションビル(?行けばすぐにわかります)の9階にあるシネコン。12もスクリーンがあり、そのいずれもがかなり小さい(マックスで2〜300名ほどでしょうか?)のが特徴でしょうか。シートには刺繍で“cineall”の文字が残っているのはご愛嬌?

さて、この日に一斉に封切りされたのが「青燕」。このロッテシネマでも3スクリーンを使っての上映です。前夜に早朝の時間割はちゃんと調べてある。9:10からの一回目に間に合うように出かけたものの、ボックスオフィスは電気が灯っているだけで人はいない。ロビーにももちろん誰もいない。こんな状態で果たして本当に上映があるのか? この9:10の回はダミーやったのか...。心配になる。
それでも、9:05になると係りの人が登場してチケットを売ってくれたし(W4,000)、モギリのお姉さんもちゃんといた。封切りの日の初回に貸切かと心配していたら、場内が暗くなってから別々に二人飛び込んできました。

この映画をどのように評価すべきなのか、ずいぶん困った。
『軍人ではなく、民間人として始めて操縦桿を握った朝鮮民族の女性飛行士の生涯を描いた』というのが正解なのだろうか。それとも『不屈の精神で自らのプライドを守り、青空に散った女性飛行士』なのか。それとも『短い生涯を太く精一杯駆け抜けて行った波乱万丈の朴敬元の姿を描いた』ものなのだろうか?
いずれにしろ、巨額の予算とCG効果を駆使した大作であるにもかかわらず、ほとんど前情報を持たずに観たボクの心は震えることも何もなかった。それがボクの正直な評価かもしれない。

舞台はそのほぼ全てが日本の立川にあった立川飛行学校。
利発で好奇心旺盛なパクギョンウォン(朴敬元:ボクケイゲン、チャンジニョン)は、女であることを理由に、親から学校へ行くことを許されない。しかし、田舎道に不時着(?)した飛行機を追いかけて行き、将来自分も飛行機を操縦すると心に誓う。
そして、苦学の末、立川飛行学校へ入学する。厳しい訓練もあるが、夜は学費を稼ぐためにタクシーの整備と運転手のアルバイトもしていた。ギョンウォンは一人の青年に出会う、その彼が二度目にギョンウォンのタクシーに乗ったとき、この青年が半島出身の留学生ハンジヒョク(キムジュヒョク)だとわかり、二人は急速に接近する...。
やがて、厳しい訓練に耐えたギョンウォンは飛行学校でもトップの成績を収める飛行士に成長し、朝鮮族の後輩も二人できた。そして、ある日、父親にソウル(?)へ連れられ帰国(?)したジヒョクが飛行学校がある立川基地に帝国陸軍の将校として赴任してきた...。

もし、この映画をドラマとして描くのであれば、ギョンウォンがどうやって勉強を続けることが出来たのか、どんな苦労をして飛行学校へ入学したのか、そしてどんな思いで厳しい訓練に耐え大空を駆け巡れるようになったのか、そこにもっともっと力点を置くべきではなかっただろうか?
「大空を飛びたい」という子供の頃の夢をかなえることが大事で、そこに至るまでの努力の姿にこそ、観る側の心を揺さぶる何かがあるのだとボクは思う。
それに較べると、操縦桿を握ってからの出来事に力点を置いてしまうのは、民族的(いやナショナリズム?)には迎合するかもしれないけれど、ボクにはもう一つピンと来なかった。

ラストの長距離飛行についても、あれは引き返すべきで、無理をする必要もなかったような気がする。それとも、ひょっとしたら日帝のせいで若くて前途有望な女性飛行士の命が絶たれてしまったと告発したかったのか...。

いずれにせよ、爽やかにも描くこともできた、でも、上辺だけの爽やかさだけを描くことを選ばなかったということでしょう。

チャンジニョンは熱演している。時折、はっとさせられるほど素晴らしい表情もしている。キムジョンヒョクも「クァンテクの弟クァンシク」の時よりはずっといい顔を見せてくれていますね。
また、日本を代表して(?)仲村トオルが出ています。

日本での上映はどうでしょう? ちょっと微妙だと思います。

おしまい。