PTU

ちびっと情けないラムシューがいい



  

シネマスコーレはハシゴすると前売料金で観ることが出来るサービスをしていて、この日のボクは三本立てだから、三本とも前売り料金で拝見することが出来ました。また、スタンプサービスも実施中、確か5本観ると6本目はサービスしてもらえる(らしい)。でも、ボクはこの次にスコーレへいつお邪魔できるのでしょう?
ヌーヴォで上映していたのに、見送ってしまい、みなみ会館へ遠征する予定だった。そもそも、2004年のTOKYO FILMexで上映されたときも、チケットは持っていたのに、やんごとなき急用で観ることが出来なかった。そんないわく付きの作品だけに、もうこの映画には縁が無いのかとかと観念していたら、ひょんなことに名古屋でめぐり合えました。なんだか嬉しかったな。

で、8月に名駅のシネマスコーレさんで拝見した2本目。

「PTU」とはどんな意味なのか?
この映画を楽しむのにはあまり関係はないけれど、「Police Tactical Unit (香港警察特殊機動部隊)」の略、夜の街を犯罪から守るためにパトロールする部隊のことのようです。

で、このお話しはPTUの活躍を描いているのかというと、実はそうではない。前日に起こった現金襲撃事件、黒社会の抗争、刑事の拳銃遺失事件、そして警察内部の派閥(縄張り?権力?)の四つの事情が複雑に絡まり、それぞれ全くバラバラに起こっていたかに見えていた事象がラストに一気に収束する。その手腕は鮮やか。さすがジョニートォーだと納得する。確かにぬるい部分もあって、快作とは呼べないかもしれないけど、こんな映画ボクは好きだな。

最も面白いと感じたシーンは、ほぼ冒頭近くの九龍城近く(だと思う)の火鍋屋での長いシーン。ここで一人のしょっぱい男が火鍋をつつこうとしていると、打ち合わせをしにきた黒社会のメンバーに席を移らされてしまう。それは力関係もあるから、店の親父が「まぁまぁ」って感じなんだけど、そこへラムシュー扮する刑事が乗り込んできて、彼はまた別の席へ移動させられてしまう。後から現れた連中はほとんど食事らしい食事をするわけではないのだけれど、この男もとうとう食いはぐれてしまう...。それこそ「そんなこともあるよね」と、ボクも緊張感を解いてしまった刹那。事件が起こるのだから、面白い。この鮮やかさがボクは好き。

香港の映画を観ていて楽しいのは、食事のシーン。もちろん家庭で奥さん(お母さん)が作った料理をみんなで囲むこともあるけれど、圧倒的に外食が多い。そして、そんなシーンに最も香港らしさをボクは感じる。

この映画では、もう一回象徴的なシーンが出てくる。
PTUのメンバーたちが休憩兼夜食のために、ある食堂の二階に集まる。ここでサイモンヤムとラムシューが密かに打ち合わせ(状況報告?)しているところにCID(特捜課)の面々が乗り込んでくる...。このお店もいかにもって感じで、ここでお茶を飲むためにだけでも、今すぐ香港へ飛んでいきたくなるなぁ。

結局、お話しは広がるだけ広がってしまう。
ラムシューもサイモンヤムももう諦めかけてところに...、「なんじゃこりゃ」の大円団を迎える。
香港は物理的な広がりがない(すなわちごっつ狭い)のだけど、それを逆手にとって、たった一夜の出来事をここまで緊張感を持って描けて、なおかつ時間内にまとめてしまう。そんな手腕に脱帽したくなる。
この映画で初めて香港映画に出会う方がいらっしゃるなら、正直「???」なお話しかもしれないけれど、ある程度慣れていらっしゃる方ならね、頷いていただけるような気がします。
確かに「ザ・ミッション/非情の掟」ほどの出来ではないけれど、なかなか楽しめる作品だと思う。秋の長夜に難しいことを考えずに楽しむにはぴったり(だと思うけどな)!
なんとちょうど10/5にDVDが発売予定のようです(買うほどではないのでレンタルでどうぞ)。

おしまい。