ライフ・イズ・ミラクル

失恋したロバが自殺を試みる



  

あまり意識はしていなかったけれど、東京へお邪魔するのは久し振りでした。ちゃんと記録はとっていないので確かなことは言えないけれど、今年に入ってから初めてかな。いや、何度かお邪魔しているけれど、映画館へ行く時間がなかったのかもしれない。
今回はまだまだ盛夏厳しい折、お盆明けの週明けにちょっとした用事があり、どうせなら一足早くお邪魔しようかと、土曜に出かけました。映画を観てからカシマへバスで移動して、サンフレの応援をする予定でした。そのバスに乗る前に、ちょこっと一本。

シネスイッチ銀座は、そう悪い映画館ではないと思うんだけれど、どうも折り合いが良くないのかな。前回は挙動不審なオヤジが徘徊していたし、今回は腕時計をなくした(もちろん、今回は自分が悪いのだけれど...)。

「ライフ・イズ・ミラクル」という作品、この前にシネカノン神戸で予告編が流れていて、ちょっと気になっていた映画。
しかし、この作品のテーマというか、製作者が伝えたかったのは何だろう?

笑いとユーモアがベースにはなっているけれど、単なるコメディではなく、全く割り切れない思いを心に秘めた物語りでもある。今、こうしてこの映画のことを思い返してみると、この映画は人生そのものを描いているのかもしれない。
すなわち、人生は本人の責ではない理不尽なことばかりが次々と襲い掛かってくるものだ。だけど、それらを全て真剣に受け止めていたら心が幾つあっても足りないのも確か。だから人間は人生を送る術を手に入れる。それは笑って物事を受け流すことなのかもしれない。おかしいから笑うのではなく、笑っていないとやりきれないのだ。

舞台は旧ユーゴスラビアのボスニアヘルツェゴビナ、それもセルビア国境に近い山の中。
難工事を終え、ようやくセルビアと鉄道のレールがつながった。これでこのあたりも栄えるかもしれない。
ルカは鉄道の技術者としてこの地に来て、今では小さな駅の駅長。ただし、列車が通ればね。どうしてかわからないけれど、今のところ列車が通る予定はなさそう。だから、手押し車(?)が大活躍だし、なにやら怪しい改造車がレールの上を走っている。
そんな平和な(?)村に、なんと戦火が迫っていた...。

2時間半ほどの比較的長いお話しだけれど、長さはそんなに気にはならない。奇妙で強烈なキャラクターを持った人々が相次いで現れて退屈しない。
ストーリーを紹介するのはなかなか難しい。悩みや苦悩をちっとも哀しそうに描かないお話しの進め方は凄い。
全てがサイドストーリーかのように見えるし、全てがメインのお話しのようにも見える。 要するに、言葉での紹介は無理なのだ。

そんな中でもサバーハ演じるナターシャ・ソラックはなかなかかわいくて、魅力的でした。でも、今後別の作品で彼女にお会いすることが出来るかどうかは...。ちょっと難しいのかもしれません。

言葉にすると、ちょっと飛躍しすぎのように感じられるかも知れないけれど、この映画を観終わってすぐに思ったのは、戦争がない平和な土地に生まれて良かった、ってことです。戦争は全くリアリティが無く始まり、嵐のように去っていく(泥沼のように続くこともあるでしょうが)。映画の中では、血が流れたり、死者が出たりはしないけれど、爆弾は炸裂し、銃で狙われる。通常の生活では考えられないほど、生死の境界線がすぐそこにある。すぐそこにあっても、笑って、泣いて、そして食べるし愛し合う。それに排泄もする。要するに生活は続いていくものなんだ。

能書きはいいので、興味をお持ちならご覧ください。
全ての人におすすめではないけれど、まずまずってところでしょうか。

おしまい。