スカーレットレター

絶望的な気分になる



  

韓国の映画をこれだけ観るきっかけになったのは、ハンソッキュウ主演の「八月のクリスマス」。
なんとも形容しがたい甘美な世界に、感動し涙した。ストーリーだけではなく、ハンソッキュウとシムウナというさわやかなコンビ。この二人が果たした役割も大きかった。ボクはすっかりシムウナさまの虜と化してしまった...。
そんなこんなで、韓国の作品を観まくって来た。「八月のクリスマス」を超えたと思える作品もあったし、まだまだという作品も数多くあった。
シムウナが引退した後、彼女を超えた美しさを持った人も何人もいたけれど、タムリを超えた人はいたのかどうか...。
彼女に初めて出逢ったのは「永遠の片思い」だったと思う。この作品に興味を持ったのは、チャテヒョンとソンイエジンが出ているからで、イウンジュはまったくのノーマーク、にもかかわらず「永遠の片思い」の主人公はギョンヒ(イウンジュ)だった。こんなさみしい演技が出来る女優さんをボクはそれまで知らなかった。彼女こそ“薄幸の美少女”。そして、実生活においても薄幸のまま、自ら命を絶ってしまうなんて...。
一方、彼の輝かしいキャリアの絶頂が「八月のクリスマス」のジョォンだったのか...。それとも「シュリ」だったのか(そういえば「シュリ」で相棒役のソンガンホ、北の将校だったチェミンシク、今やこの二人との立場は逆転した?)。
決して、タフでマッチョな役どころをハンソッキュウに求めているわけではない。ボクは優しさと芯の強さを併せ持ち、なおかつ自分に対しては律して厳しい、そんな彼を期待したい。「僕にも妻がいたらいいのに」のソルギョング、「わが心のオルガン」イビョンホン、あんな純でぼくとつとした役を一度でいいから演じてもらたいなぁ。何か「こうでなきゃいけない」という固定概念に囚われてしまっているのではないでしょうか? タフでマッチョな役をこなせることだけが、スターの条件ではあるまいに...。

「スカーレットレター」を広島は鷹野橋にあるサロンシネマの座り心地のよいシートで、まるで寝転んでいるかのような姿勢で観ながら思ったことは三つ。
一つ目はイウンジュの悲しさ。二つ目はハンソッキュウの役に恵まれない哀しさ。そして三番目は、こんな話しはもういらない、だ。

ストーリーは複雑怪奇。お話しが進めば進むほど、さまざまに絡み合い、そして意外な展開を見せる。最初は痴話がらみの猟奇的な殺人事件と、この事件を捜査する女性にだらしない刑事(ハンソッキュウ)の話しだと思っていたけれど、そこからどろどろの人間模様が展開される。特に驚くべき展開でもないのだけれど、アンモラルな日常と血潮の連続、そして極限状態に置かれた人間の行動を見せ付けられ、ほとんど放心状態。お腹いっぱいで苦しくなる。まともな神経を持った人間がこの映画をエンターテイメントとして楽しめるのかどうかは、甚だ疑問。特にラスト付近、クルマのトランク内で繰り広げられるエピソードは常軌を逸している。

ハンソッキュウとイウンジュの二大スターが激突し、イウンジュは淋しい星になり、ハンソッキュウはまたしても自分のキャリアと自尊心を痛く傷つけられてしまった。
そして、ボクはげんなりしながらも、写真館の女性店主ソンヒョナのしたたかさに、かすかな美しさを感じたのでした...。

おしまい。