恋の風景

靴下はキノコのようにたたんでね



  

青島(チンタオ)にはまだ行ったことがない。もっとも、最近は大陸へお邪魔する用事もないので、今後青島へ行くこともないような気がする。
映画の中の風景は「切り取られた風景」だから、映画の中のような風景が本当に広がっているとは思わないけれど、かつてはドイツの租借地で、ドイツ人によって設計された街並みは坂もあることもあり、なんだかヨーロッパチックで、観ている限りでは一度行ってみたい。行ってもいいかな。
そう言えば、この夏にでも甥っ子が青島へ赴任するらしいけれど、それはどうなったのだろう?

カリーナラム(林嘉欣)が出ているのは知っていたし、「山の郵便配達」のリィウイェ(劉Y)が出ているのも知っていた。でも、イーキン(鄭伊健)も出ているとは知らなかった。

香港から来たマン(カリーナラム)、青島での生活では浮いている。この子、こんなにかわいかったかな? 前回観た「ヒロイック・デュオ−英雄捜査線−」では制服の警官役で、もっともっとコロコロ丸かったような...。これ、実はカリーナラウとカリーナラムの勘違いなの?
そして、彼女以外の人たちの垢抜けなさが「いい」。実にいい味出してる!

お話しはそのものは、哀しくて切ない。
恋人サム(イーキン)を失ったマン(カリーナラム)が、サムが生まれた街・青島を訪ねてくる。この街に来て最初に口をきいたのが、海岸で子供たちと一緒に遊んでいたシャオリエ。道を尋ねた。サムの姉が営んでいる旅館の場所を教えてもらうために。
青島へ来たのは、生前の彼が日記に「故郷の情景が目に浮かぶ」と書き残していたから。彼が最後に書き残したスケッチを手がかりに、マンはこの街に来た。
サムが渇望したその風景を自分もこの目で確かめたい。いや、それだけではない。本当は自分の気持ちに整理が付けたかったのでしょう。
サムは幼い時に青島から香港へ移民していた。

マンはサムの姉に暖かく迎えてもらい、その旅館で暮らし始める。スケッチの風景を探し、そして彼が書き残した日記を日に一日分だけ書き写す。姉の美容院(散髪屋?)を時折手伝いながら。
この地区の配達を担当しているシャオリエと親しくなる。彼ならいろんなところに行っているから、例の風景の場所も知っているかもしれない。

二人で歩く青島の風景は素敵だ。季節は冬。
二人して足を伸ばす街並みは景観地区なのかな。坂があり、石畳が続いている。背が高くない洋風の建築物が美しい。

このお話しを観ながら、ボクにはわかっていた。結局、この風景の場所などわからなくてもいいんだ。そうではなく、彼が過ごした街を歩き、暮らす。そして日記を写す。その日記を写す作業は永遠に続くわけではない。
その最後を写した日、マンは香港へ帰る。スケッチの場所が見つかろうが、見つかるまいが。 ある意味、時間がかかるけれど、一つのセレモニーだったんだ。
でも、青島にも人がいて、生活がある。この街にも息をする人間が住んでいる。
癒しであり、忘却であり、そして再生。

最後、どうなったのか、それはボクにはわからない。
でも、思っていたよりもいいお話しだったのは確か。
大阪での上映はもうすぐ終わってしまう(しかも朝から2回だけ)けれど、関西ではこの後、京都で上映の予定が組まれているようです。じんわりとオススメです。
ひょっとしたら、イーキンのファンの方にはちょっと喰い足らないかもしれませんけどね。

おしまい。