ビートキッズ

地車DNA



  

何も考えずに、あまり期待ぜずに映画とスクリーンで向き合い対面する。期待するものがなかっただけに、すんなりと素直にボクの心の中にしみいって来た。
もちろん、拙い芝居や、詰めの甘さも目に付く。だけど、そんな欠点を吹っ飛ばしてしまうほどの面白さだ。やっぱり、映画はストーリーの良さ、そして生きの良い役者だなぁ!

大阪が舞台に繰り広げられる青春物語り。
関西のリズムって、コンコンチキチキの祇園祭の鐘と太鼓? それとも岸和田の地車(だんぢり)のカネタイコにソーリャソーリャの掛け声か?
映画の中では、地車のDNAを引き継いだ男の子エージ(森川貴大)が吹奏楽部に入り大太鼓を担当するうちに自分の身体の中に流れるDNAに目覚め、校内のバンド活動を経て、セミプロデビューまでを一息に見せてくれる。

でも、バンドの話しがメインじゃない。あくまでも、学園モノ。中村雅敏が校長先生、彼もこんな役をするようになったのか(ボクも年を喰うハズやなぁ)...。
強烈な個性を発揮するナナオ(相武紗季)がいい! こんなスーパー少女がいるわけはないけれど、案外「こんな子いるかも」って、リアリティがあるような上手い描かれ方。彼女の強い部分をさんざん強調しておいて、ここと云うとこでちびっと弱味も見せる。
このエージとナナオが、恋仲なのかと云うと、そうでいてそうでない。お互いはわかっていたのかもしれないけれど、二人は何も言わない。そして、何も起こらない、起こさない。

この二人以上にいい味を出しているのが、豊川悦司。
エージの父親役で、もとはの地車の大工方(だいくがた・地車の屋根の上に乗って舞う人)。それが祭りの最中に地車から転落してしまい、それっきりギャンブルにのめりこむへたれになってしまった。彼のへたれ方がいい。この人、こんな芝居も出来るんだなぁ、見直しました。
音楽の先生役の人もええ感じ。ピアノを弾いていたのは...(ちょっと、あんたそれはないやろ!)。

ナナオ以外はルックスももうひとつの垢抜けない面子で、お話しも「詰め込めるだけ詰め込みました」という感じなんだけど、なぜかボクの心にはツルリと入ってきて、ジンジンした。
学生時代にはバンドなんて最も遠い場所にいたし、今も聴くけれど演奏しようなんて思ったこともない。でも、この映画には何かある。ひょっとしたら、ボクの血の中にも地車DNAが流れているのかな?

関西では先行ロードショー。テアトル梅田ではもう少しモーニングのみで上映中。全国ではこれから上映されるはずです。
この映画をご覧になって、地車を知ったあなた。9月の中旬、泉州は地車一色に染まります。是非、一度岸和田へお出かけください!

おしまい。