恋に落ちる確率

これは夢だった



  

なんとも不思議な映画だった。
こうして、この映画を思い出しながらキーボードを叩いていると、言葉にして表現するのがとても難しいことに気付く。
舞台は現代のデンマーク。デンマークって何語を喋っているのだろう? 首都はコペンハーゲンですよね、きっと。

ちょっとTVゲーム感覚。時折、地図上に主人公の現在地が点滅するドットで表示される。それ自体に何か意味があるとは思えないけれど。
ナレーションが入り、これから展開されるストーリーがフィクションであることを教えてくれる。このナレーションはエンディングにも入り「あゝ、そうやった。これは夢やった」と思い出させてくれます。

若いカメラマンの男。
そして、初老の小説家を旦那に持つ若い妻。

二人は偶然メトロのホームですれ違う。そして、そのまま恋に落ちてしまう。
いや、違うな。恋に落ちたのではなく、男が女に惚れてしまった。
女の後を追い、メトロの階段を駆け上がる。
明るく、清潔で、無機質でさえあるメトロから一歩街へ出ると、外は暗く、石畳の道に、石で創られた古いビル。ぼんやりと灯りが漏れているのは古風なカフェ。
そのカフェのカウンター。ライトを浴びてその女が座っている。ぞくっとしてしまいそうなブロンドの美人。

不思議なことが起こる。
一夜が明け、自分のアパートメントへ戻ると、あるはずの部屋のドアがない。鍵が開かないとかではなく、自分の部屋への入口そのものがない。階下に住む隣人へ尋ねても怪訝な顔をされるだけではなく、あげくにドアを閉ざされてしまう。まるで知らない人を見るように。
仕方なく親友の家に訪ねていくと...。そこでも「お前なんか知らない!」と突き放されてしまう。これって自分の身に何かが起こってしまったのか?

でも、正直云って「よくわからない」。
アレックスの心の動き(?)が、上手く表現できていないのだと思う。ずっと付き合ってきたシモーネと行きずりのアイメとの間で「自分がどうしたいのかわからない」というアレックスの葛藤が、いかにもあっさりと描かれている。メトロの車内でもう少し心の乱れがあっても良かろうに...。
その後に起こる事態が唐突なだけに、葛藤があり、乱れがあり、その結果困難な事態に陥るというプロセスをしっかり説明してくれないと、ボクのような凡庸な人間は、ただ混乱に陥るだけだ。
新たな恋に落ちること、それが現在や過去との決別を意味するのだとは、映画を観ながらはなかなか理解できなかった。別に教訓めいたことが描きたかったのではないだろうから、もう少し迷いや悩みをストレートに出しても良かったのではないでしょうか?
それに、シモーネの旦那もちょっと意味不明だなぁ。

斬新で、シャープなアメリカンスタイルなホテルのスイート、メトロの構内と車内。
そして、一転してモノクロの画面を思わす古い街並みとカフェにレストラン。
その中で、恋に翻弄される男。

そう。これは夢だったんだ。

 

とにかく、出てくる二人がとてつもなく格好良くて、美人。ぞくっと来て、クラっとしてしまう。
アレックス役のニコライ・リー・カースは、まぁいいとして。アイメを演ずるマリア・ボネヴィーは凄くいい! ボクも恋に落ちたい!
しかも、この人がアイメとシモーヌの二役だったとは、家に帰って公式siteを拝見するまで全く気が付きませんでした。

おしまい。