ターンレフト・ターンライト

ジジちゃん、こんにちは!


  

“向走左、向走右”
そんな映画があるんやと思っていたら、いつの間にか大阪でも上映が始まっている。
中華圏の作品は、いわゆる大作しか上映されなくなっているのに、こんな地味目の映画も上映してくれるんだなぁ。なんだかしみじみと嬉しくなってくる。現地でそこそこヒットしても、こちらにはやって来ないことも少なくないのにね(大ヒットしても、来ないことも...)。
この映画の挿入歌をジジちゃんが歌っているのは、もちろん知っていた。でも、映画そのものにジジちゃんが出ている(しかも主演)のは知らなかった(これでも、一応ファンです)。自分の中でかつてほど中華圏にアンテナを張っていないからなぁ、それも仕方ないね。
それに、話しによるとこの「向走左、向走右」台北出身のジミーの絵本が原作らしい。「地下鉄」と同じパターン。ボクにとっては「地下鉄」がもう一つやっただけに、少し不安。

香港映画だと思い込んでいたら、台湾が舞台。セリフも全て普通話。
でも、それはそれで、特に違和感もない。久し振りに台北の街並みを見ることが出来て、懐かしかったくらい。まぁ、もっとも「懐かしい」と思うほど通ったわけでもないけどね。
台北と香港は似ているようで、やっぱり微妙に違う。土地が狭いからどんどん建物が高層化していくしかない香港に対して台北はどこかまだ余裕があるように思える。主人公の衣装も、街を歩いている人たちの格好もどこかカジュアルで垢抜けているような印象を受けるしね。

カネシロタケシとジジちゃんが主人公。
この二人にとってお互いが「運命の人」なのだけど、すぐ近くにいながらすれ違ってばっかり。運命のいたずらでなかなか出会うことが出来ない。この映画のテーマは、ズバリ「この二人が出会うことが出来るのか」というわかりやすいものになっている。
それが、結構お話しが上手く出来ていて、観ていて飽きないし、イライラもしない。呆れてしまうこともない。微笑ましく、ニコニコ笑いながら観てしまう。もちろん、こんなことがあるはずがないのはわかっている。でも、心のどこかで「ひょっとしたら...」なんて夢を見させてくれる。
ジジちゃんとカネシロくんという顔合わせは「君のいた永遠・とき」以来。映画そのものは前作よりも何十倍もいい出来です。前作がアイドル映画だとすれば、今回はロマンチック・コメディかな。比較的幅広い年齢層で楽しめるようになっていると思います。
カネシロくんもジジちゃんも決して芝居が上手いわけではない。それでもぐいぐいと見せてくれるのはストーリーなのか、それとも医者と食堂のお姉さんのお陰なのか...。この脇を固めてくれる二人の存在はそれだけでなかなか笑わせてくれる!拍手!
ボクの贔屓ラムシューもちょこっとだけ顔を出しています。彼曰く「パリで修行した」なのに、実はイタリアンレストランなのには、笑うしかないけどね。

この映画を観ながら、ジジちゃんファンのおっちゃんの立場で考えたこと。
まず「ジジちゃんにもようやくこんな役が回ってきて、なおかつ演じることが出来るようになったんやなぁ」
かつての彼女にはこんな芝居が求められる役は決して回ってこなくて、単にかわいい女の子って役ばかりだった。お飾りのお嬢さんって役ばかり。きっとそれほど芝居がどうしようもなく下手だったんやろうなぁ。それが、少しは風向きが変わってきたのかな? さほど演技が上達したとは思えんが...。
もう一つは「もう少し早く日本で紹介してもらいたかった」ってこと。
香港など中華圏ではそれなりの地位を確立している彼女だけど、日本ではまだまだ全くの無名。でも、いまさらアイドル路線で売るわけにもいかないし、演技派と呼ぶにはほど遠い。難しいなぁ。まぁ、本人も事務所も日本での活動に力を入れているわけでもなさそうだし、それはそれでしゃぁないか。

この日は祝日の水曜日。シネフェスタの一番大きいスクリーンに半分ほどの入りなのには驚きました!
男性のお客さんはほとんどいなくて、みなさんのお目当てはカネシロくんだったようでしたけどね。数少ない男性のお客さんも、ジジちゃんがお目当てだったのかどうか...。しかし、カネシロくんがヴァイオリニストで、ジジちゃんがポーランド語が堪能な詩の翻訳家という“突飛な設定”には「???」
途中、音が割れてしまう箇所が少なからずあったのは残念でした。まぁ、ミュージカルでもないから特にどうってことはなかったですけどね。

「2046」で「やっぱり香港(大陸・台湾)映画はあかんな」なんて感想を持った人にもこの映画は充分お楽しみいただけるいと思います。ボクは「LOVERS」のカネシロくんより、この映画の彼の方が何倍も素敵だと思いますよ。ジジちゃんも「再見」も悪くないけれど、今回の方がいいかな。
何も考えずに楽しめる作品です。もう少し動物園前シネフェスタか天六のホクテンザで上映しています。出来れば大きなスクリーンでご覧いただきたいですが、ビデオやDVDでも充分にお楽しみいただける内容です。

次回は、この日シネフェスタで拝見した三本目、韓国の作品「浮気な家族」を紹介する予定です。

おしまい。