LOVERS

これほどのものとは思わなかった


  

8月は怒涛の勢いで映画を観たのに、9月は20日を過ぎてようやく一本だけ。我ながらこの落差には驚いてしまう。イカンなぁ。
ダイアン・レインの「トスカーナの休日」。あれれと思っているうちうちに終わってしまった。随分長く上映していたのに...。シネぴぴあかパルシネマでやってくれるかな? その他にも「ステップ・イントゥ・リキッド」とか「少女へジャル」「イカレスラー」などなど観逃してしまったなぁ。もっとも、余裕があるときでもいろんな制約があって、観たいと思った映画を全部観ることが出来るわけではないので、観逃してしまうのも仕方ないか。

この秋、観逃せないと思っていた作品は三本「LOVERS」「誰も知らない」「無限序曲」。
で、ようやく敬老の日の夕方遅くに「LOVERS」を拝見してきました(しかし、9/20を「敬老の日」と言われても、ピンと来ないのはボクだけでしょうかね?)。
意外や意外。100名ほど入れる劇場、ほとんど席が埋まっている。公開されて半月余りが過ぎているから、空いている(ガラガラ)と思ってんけどなぁ。年齢層はかなり高かったけどね。

物語りそのものの底が浅かったな。
「えっ、もう終りなの?」と思ってしまった。

ひょっとして、チャンツィイーとカネシロタケシは芝居が下手なんじゃないかなぁ。
アンディラウが画面に入ると、ピシッと締まるけど、二人だけの時はどうも間延びしてしまう(ように感じた)。

物語りを追求するのか、それとも様式美を求めるのか。
この映画はそれを両方狙って、こけてしまったのではないでしょうか。
しかし、あの緑のおばさんたちは一体...。

確かに、芙蓉楼で太鼓を並べて踊るシーンは圧巻。アンディラウが放り投げた豆が太鼓にビシッと当たる。チャンツィイーが舞うと、彼女の袖が伸び、バチの代わりに太鼓を打ち鳴らす。
「まぁ、ご冗談を!」って設定だけど、チャンツィイーとアンディラウのこの絡みは緊張感があり見事だった。

しかし、単にボクが見逃してしまったのかもしれないけれど、この芙蓉楼での二人には濃厚な関係があったとは見えなかった。
だから、突然「二人が出て行ってから、一睡も出来ない」なんてアンディラウに言われても「???」が頭の中で点滅するばかりだ。
物語りに伏線がなく、とって付けたような展開にボクは付いていけなかったし、これでは心も動かない。

チャンツィイーにしても、心の機微が演技にも視線にも顔の表情にも表れていなかった。雪の積もる草原で「あんた、まだ生きてたの?」 カネシロタケシに至っても、この鈍感男が恋なぞ感じることが出来るのか? ちょっと不安になった。

役者が悪いのか、演出が悪いのか、それとも物語りそのものに難があったのか?(ひょっとしたら、それ全部?)

期待が大きかった割には「HERO」に引き続きどうも納得いかない。
美しく、恐ろしいほどの日程と予算が費やされた作品であることはよくわかる(それは「HERO」もそうだった)。でも、潤沢な予算や余裕のある日程は名作の絶対条件ではない。少ない予算に制約された日程の中でこそ、工夫や創意が生まれるのも事実。

チャンイーモウの次回作に期待と言うよりも、次回作を観るのがちょっと恐いょ。

おしまい。