オー!ブラザース

オービスの写真も役に立つのね


  

映画に出ている俳優さんが、実際はどんな人なのかを想像するには、映画で演じている役から判断することが多い。すなわち、映画の中で割り当てられているキャラクターがその俳優さんのイメージをほぼ決定付ける。ボクはあんまり芸能通ではないので、余計にその傾向が強い。
どうして、こんなことを冒頭に書いたかというと、イジョンジェが演じるサンウという情けない男が、従来のイジョンジェのイメージからは遠い存在であるにもかかわらず、妙にマッチしていたから。
韓国の俳優さんは、サンウのような情けなくてうだつが上がらないチンピラの役がとても似合う。ちっとも違和感なく演じてしまうところが凄い。もっともこんな役はチェミンシクが一番似合うと思うけど。

このサンウ、浮気の現場をカメラに撮ることを仕事にしている。しかも、撮った写真を調査には使わず、本人たちに売りさばいて小金を稼ぎ、なんとか生活している(浮気の現場を移される役でコヒョンジュンが数カット顔を出しています)。要はブラブラして定職にも付かずに毎日その日を暮らしている。
親分からは、借金の取立てをしろと言われているが、本人にはその気はない。
何故か高利貸しを営んでいる刑事(イムンシク)から借金をしているが、返す当ても無く、その場限りの言訳をして逃れている。
が、そんな気ままな生活も一転。もう何年も前に姿をくらませた父親が借金を残して死んでしまったらしい。父親が死んだことは屁とも思わないが、彼が残していった負の遺産を一人で背負わされることになった。調べてみると、父親はその後結婚して、腹違いの弟を産ませているようだ。その弟を見つけ出せば、そいつに借金の半分は面倒を見させられるハズ。そんな気持ちでサンウはまだ見ぬ弟を探し始める...。

よく思い出してみたら「純愛譜」という訳のわからない日韓合作の映画でも、このイジョンジェかなり情けない公務員の役をやっていたなぁ。でも、本当は「イルマーレ」や「インタビュー」のようなクールでかっこいい役が似合っている(ような気がする)。それがいきなりこんな役だもんなぁ。ちょっとびっくりしたけれど、余分な力みもなく、イジョンジェって芝居が上手いんだなぁとつくづく感心してしまう。不思議なもんです。
サンウが探し出した弟ボングにイボムス。この人は様々な役をこなせる個性派の俳優さん。二枚目の役はないけれど、年齢不詳で様々なキャラクターを飄々とこなしてしまう。この人も芝居が上手いな。
その他にも、ヤクザな社長にはボクが「韓国の丹波哲郎」と密かに名付けているパクヨンギュ、サンウの手下にはリュスンス、この人「ダルマと遊ぼう」にも出ていましたね。

結局、最初は金目当てで出会ったこの異母兄弟。いつしか一緒に仕事でもコンビを組むようになり、お互いを認め合う。一風変わったヒューマンコメディになってる。チャンドンゴンとウォンビンの兄弟とはずいぶんちゃうけどね。

いかにも映画向けの「作られたお話し」なんだけど、いつしか観ているこちら側もグイグイ画面に引っ張られていく。そして、最後にはホロっとして、心が温まる。終わってから「なんだか、やられたな」と思ってしまう。

この「早老病」というのは本当にある病気なんだろうか? “つかみ”としては面白かったけれど、それ以上ではなく、途中からはすっかりフェードアウトしてしまう(でも、それはそれでいい)。
珍しく、シモネタや下品なネタもほとんどなく、ある意味感じのいい作品になっています。
日本での劇場公開は不明ですが、あってもいいのではないでしょうか。そんな気がします。

今年初めて大阪で開催された「シネマコリア」。
ボクは初日のみ、4作品連続での参加でした。どの回も満席で、熱気が伝わってきました。この熱気が「韓流」という一時的なブームがもたらしたものなのか、それとも長続きするのかはまだわかりません。でも、今回の4本の作品で日本でもA級のスターと呼べるのは「オー!ブラザース」のイジョンジェだけで、その他の作品には今からの人ばかり、そんな地味目の作品でもお客さんがこれだけ集まったのは素直に評価したいですね。
それに、今回の4作品、どれもが思わずニヤっとしてしまうような渋い選択。
韓国の映画だからどれでもいい作品とは限らない。そんな玉石混合のなかで、玉に値するようないい作品が選ばれています。来年もますます楽しみです! もちろん、来年も大阪での開催期待しています!
「シネマコリア」の関係者の皆さんお疲れ様でした、そしてどうも有難うございました!

おしまい。