天国の青い蝶

自然を前にするとドラマは色褪せる


  

台風が過ぎて行った。台風一過で涼しくなるのかと思ったら、空はまだまだ夏の色をしている。夏の名残を惜しむにはまだ少し早いようだ。それにしても、今年は台風の当たり年。どんどんやって来る。ボクの周辺には被害が出ていないけど「もう、勘弁して」という地方も少なくないでしょう。

今回は初めてお邪魔するシネスイッチ銀座で拝見してきた「天国の青い蝶」。ここシネスイッチは前売り券を買うために窓口を何度か使ったことはあるけれど、劇場にお邪魔するのは初めて。チケットブースの雰囲気から、そんなに大きくないと思い込んでいたけれど、地下に降りてびっくりした。200名以上入れる大きなホール。地味な作品だけど、日曜の夕方だけあって半分近く埋まっている。

変な人がいる。上映が始まってから、頻繁に席を動き、必ず誰かの隣に座る。う〜ん、感じ悪いぞ!
ボクが気付いただけでも五回は席を替わった。かわいそうに、隣に来られたお客さんの一人(女性)は途中で退出して行った。気味が悪い。劇場のイメージが損なわれる。
今まで、随分たくさんの映画を観てきたけど、こんな人は始めて。何をしたかはわからない。でも、この人が映画を観に来たのではないことは確か。事前に察知するのは無理とはしても、劇場側で何とか手を打たないと...。途中で退出した方は少なくともここへは当分来ないと思います。おっちゃんのボクでさえ、出来ればもうここでは観たくないと思った。

さて、気を取り直して。「天国の青い蝶」のお話し。

お話しそのものは単純。アマゾン流域に生息する、金属のように青い光沢を放つ蝶に魅せられた少年が、昆虫の専門家にねだって、その蝶を捕まえにアマゾンへ一緒に連れて行ってもらう。それだけ。
でも、その少年ピーとは脳腫瘍をわずらっていて、主治医からは余命幾ばくもないと宣言されている。腫瘍の影響で身体のバランスが崩れ、歩くこともままならない。車椅子での生活。
そんなピートが、唯一興味を持っているのが昆虫であり蝶。テレビ番組で知った青い蝶を何としてでも自分の手で捕まえ、標本にしたいと切望していた。

ピートはそのテレビ番組に出ていた昆虫の専門家アランを訪ねる。是非とも次の旅には自分を同行させて欲しい、そう伝えるために。でも、実はこの少年には「次」はない。あるのは「今」だけ。
最初は拒否していたアラン。次第にほだされ、渋々OKを出す。
果たして、ピートは「青い蝶」を手にすることが出来るのか?

こうやって文章にしてしまえば、愛想もへったくれもないけれど、大きいスクリーン映し出されるアマゾンの豊潤な自然をめにすると、何とも言えない気持ちになるから不思議。
蝶だけではなく、その濃密な自然の姿をとても美しく表現してくれる。
ただ単に「蝶を捕まえる」のではなく、母と子の愛情、博士の後悔、そして大自然の神秘と人間の無力さを、さり気なくかつ濃厚に映し出される。
まぁ、そんなことは関係ないか。自然を前にすると、人間のどんなドラマだってすっかり霞んでしまう。

ちょっと奇麗事すぎるような気がしないでもないですが、実話ベースだけにそれはそれでいいのではないでしょうか。
素直な気持ちでスクリーンに向き合って見て欲しい。
圧倒的な自然を前にすると、あざとさとか計算とかがいかに無力なものなかを確かめてください。
ボク自身は気が散っていて、落涙するまでは至らなかったけど、「いいお話し」です。まずまずのオススメ。チャンスがあればどうぞ。

主人公の少年がなかなかかわいい。この子「ホワイト・オランダー」に出ていたそうですが、全く記憶にない(あかんなぁ)。
お母さん「キル・ビル」のユマ・サーマンかと思っていたら、別の俳優さん(パスカル・ブシェールという方)だったようです。
例の青い蝶だけが、CGで、それは仕方ないとしても、そのシーンだけちょっと浮いてしまっていたのが残念。

大阪ではシネ・リーブル梅田で、もうすぐ(9/4から)上映されるようですね。

おしまい。