「生活の発見/気まぐれな唇」

よくわからなかった


  

今回は梅田。テアトル梅田のレイトショー。

ボクはホンサンス監督の映画を観るのは初めて。「江原道の力」や「豚が井戸に落ちた日」など、タイトルは凄く印象的だけれど、今までスクリーンでお目にかかったことはなかった。
今回はメジャー公開なので、見逃してはいけないと思い、上映終了直前に駆けつけた。お客さんはパラっと10名ほど、予想外に少ない。このところ相次いで韓国映画が公開されて、ある意味新鮮さがなくなったこともあるのかなぁ。

ボクには「よくわからなかった」。この映画が評価されているのも、日本で劇場公開される意味も。
ただ、何も考えず、気軽に観るのには意外と向いているかもしれない。

ストーリーはいたって簡単。
そこそこ顔が売れている役者ギョンス(キムサンギュン)が、予定していた仕事が流れてしまい、かねてから誘われていた春川に先輩を訪ねる。ここで先輩の女友達ミョンスクと出会い、寝る。そして、春川から故郷の釜山に向かう列車の中で偶然隣り合わせたソニョンに惹かれ、慶州で途中下車し、彼女を追い掛け回した末に、やっぱり、寝る。
それだけ。

それは、もちろん寝るまでにいろいろある。だけどそのドラマがどうも薄っぺら(のように思えた)。吟味して練られたストーリーではなく、どうも行き当たりばったりの底が浅いドラマのように思えて仕方なかった。

この映画の面白さは、深刻にならず、飄々としたギョンスの表情だろう。それにしても、何も考えず、そのときそのときの思いがままに行動するおにいちゃんだな、このギョンスは。
女(ミョンシク)から逃げれば追いかけられ、女(ソニョン)を追いかければ逃げられる。その飄々とした滑稽さがこの映画の魅力なのかもしれない。
それにしても、飲み喰いするシーンが多い。ギョンスはちっとも間を置かずに飲んでばかり。先輩の親戚のおばちゃんが出してくれた食事に、代金を払うと言ったのには驚いた。

後半の舞台になる慶州(キョンジュ)には、だいぶ前だけど一度行ったことがある。駅前の市場もうろついたので、なんだか懐かしかったな。

この映画が、いいとかには関係ないけれど、ボクも何の目的も持たずフラフラと旅がしてみたいな。根性なしだから、きっとギョンスのような女性との出会いはないだろけどね。
そんなことを思いながら気楽に観るのには向いています。
「殺人の追憶」にソウルから来た刑事役で大活躍のキムサンギュンもいいけれど、二人の女性陣もなかなか良いです。特に、ソニョンを演じるチュサンミはいいなぁ。

残念ながら、テアトル梅田での上映はもう終了しています(偽ジェでの紹介も随分遅くなってしまいました、スイマセン!)。恐らく、DVD・ビデオになるでしょうから、興味があれば滑稽なギョンスをご覧ください。

当初は「生活の発見」(原題のそのままの直訳)というタイトルで紹介されていたけれど、劇場公開に際して「気まぐれな唇」という邦題が付けられている。この邦題、悪くない。英題の「The Turning Gate」よりずっといい。英題のままだと、何か禅問答のような意味深さを感じてしまう。

おしまい。