「歌追い人」

バラッドの唄声はスバラシイ!


  

久し振りに九条のシネヌーヴォに足を運んだ。ちょっと来ていないうちに、商店街のお店が代わっている。コーヒーショップの跡にファーストフード・スタイルのうな丼屋が開店している。この時はお客さんが一人もいなかったけど、大丈夫かな?
観てきたのは「歌追い人」。なんとも面白いタイトル。原題は「Song Catcher」。
どうせがらがらだろうと思っていたのに、20名ほどのお客さんが入っていたのには、正直驚きました。ヌーヴォのいつもの席に座る。この席はボクのお気に入り。最後部の画面に向かって左端。この劇場はもう少し客席に傾斜が欲しいなぁ。

100年ほど前のアメリカでのお話し。
大学でフォークソング(古民謡?)の歴史を教えている女性の助教授が主人公。この助教授が歌を採集している。ここで、歌の採集といえばどうしても大陸の映画「黄色い大地」を思い出してしまうのはボクだけではないでしょう。
焦点が絞りきれていないのかなぁ。それとも、原作があるのかな。その原作を忠実になぞるあまり、ちょっと主題がボケてしまったのでしょうか? 思い切って、妹さんのサイドストーリーを省いた方が良かったような気もします。高尚な(?)歌(バラッド)の採集と、俗っぽいお話しが同じ土俵で語られることになり、どうもしっくり来ないことになっている(ような気がする)。純粋に歌の採集の部分だけで充分に展開できるし、その方が完成度はより高まっていたような...。

それにしても、西ヴァージニアの山の中でイギリスやスコットランドで歌われていた、古い恋の歌「バラッド」が口承で伝わっていたなんて、なんともドラマチックで、ロマンチックなんでしょう!
傷心の助教授(主人公)が妹を訪ねて、その過程で偶然古いバラッドに出会う。そして、徐々に自分を取り戻し、最終的には違う道を選ぶ。そんなピュアなお話し。まぁ、その割には妙な部分も多いんだけどね。
主人公の女性にどうも魅力を感じないのはボクだけだろうか。この女優さんを違う方に替えるだけで、作品のイメージは随分変わると思うんやけどな。
そんな中で存在感を示すのが、歌が上手なおばあさんと、ひたすら歌を唄う少女。この少女、誰かに雰囲気が似ていると思ったら、ドリカムのヴォーカルの女の人(名前は何だったっけ)だ。かなり似ていると思います。
もうひとつ、100年前の女性はなんちゅう服を着ていたんでしょうね。あれだけ何重もの下着(?)を着ていたら、さぞかし苦しかったでしょうね。着るのも大変なら、それを脱がすのも大変やってんな、と妙な感想を持ってしまいました。

歌を採集する。そんなこと考えもしなかったけど、文化そのものを記録するこの行為は努力の割には、評価されることが少ない、ほんまに地道な作業。でも、記憶の中に埋もれてしまい、もう二度とボクたちが耳にすることが出来ない歌は数え切れないほどあるんやろな。それとも、著しく変化してボクたちの耳に届いているのかもしれない。
そんなことを考えさせられる映画でした。うーむ。テーマがテーマだけに、作り方によっては教養番組のようになってしまうし、興業的な側面を考えればこの映画のようになってしまうのかなぁ。ほんと、映画って難しいものですね。

何時まで上映しているのかは知りませんが、ある意味では観て損のない映画だと思います。それにサントラが欲しくなりますよ(事実、上映終了後に何枚か売れていました)。

おしまい。