「ブラウン・バニー」

男という生き物は「心が弱い」


  

「バッファロー66」でボクのハートを鷲掴みにしたヴィンセント・ギャロ。あれ以来、何年振りだろう。新作を引っさげて登場だ。
でもなぁ、期待して観た「ガーゴイル」(この作品には、出演だけで演出はしてないけどね)では大きく裏切られたしなぁ...。この「ブラウン・バニー」も耳に届く評判は、そんなに良くないしなぁ、一抹の不安を感じる...。
この日は、J2の最終節、川崎フロンターレ戦を等々力で見てから渋谷に戻ってきた。日曜の夕方、渋谷の街はラッシュ時並みの人の多さで、急いで歩きたくてもそれも出来ない。ようやくシネマライズにたどり着いたらそこには長蛇の列。前売り持っていたからその列に並ばずに済んだけど、座れるのかなぁ...。

音の使い方が斬新。実に斬新。静寂と騒音が交互に繰り広げられる。
そして、この映画で語られる物語りは実に不可解なものだった。

どう評価していいのかまるでわからない。
恐ろしく長い助走を経て、ラストに凝縮されるストーリーに正直に驚愕するのも正しい評価だろう。
それとも、まるで取り止めが無く訳がわからないというのも、また普通の評価だと思う。

ある意味、ロードムーヴィーだ。
バド・クレイはバイクのレーサー。東海岸で開かれたレースに出場し、翌週カリフォルニアで開かれる大会に転戦するため、愛車のバイクを載せたバンを一人運転して大陸横断の旅に出る。何も急ぐ旅ではないのだ...。
それにしても、一切の説明が省かれている。観ているこちらとしては、何もわからないまま黙ってこの映画を眺めることしか出来ない。孤独なレーサーが心の渇きを癒すために、一緒にカリフォルニアまで行く同伴者を求めているのか? ありゃ、置き去りにしちゃったぞ。
そうこうしているうちに、クレイには一時期一緒に過ごしたデイジーという女性が存在していたことがわかる。彼女は一体何だったのか。
この旅でクレイがすれ違うのは、バイオレット、リリーそしてローズと、何故か花の名前が付く女性ばかり。いや、クレイは女性の名前を確かめてから声を掛けていたような気がする。

偉大なる独り善がりなのか。
それとも大いなる悔恨の鎮魂歌なのか。

寒い外でサッカーを見て冷え切った身体で、いきなり暖かい室内(映画館)に入り、身体が暖まってくると眠気に襲われる。しかも、恐ろしいほどに単調で起伏がない作品なのだ。睡魔との闘いに敗れ、時折気を失ってしまう。

そして、最後の最後。いきなり物語りは大きく、劇的に動く。

ヴィンセント・ギャロは、男という生き物が「心が弱い」のをよく知っているんやなぁ...。

この映画の評価は是非ご自分の眼でお確かめいただきたいですね。
う〜む。
嫌悪感すら憶える人もいるだろう。それとも遠くない将来、伝説の名作になるのだろうか?

バッファローは「66」、クレイのバイクのナンバーは「77」。それじゃぁ、次のギャロの作品に出てく数字は「88」かな。それはどうでもいいけど、もう少しわかりやすいお話しにして下さいね。

おしまい。