「永遠のマリア・カラス」

心に染入る何かがある


  

今までファニー・アルダンという女優さんを単に「口がでかいだけ」の人だと思っていたけど、認識を新たにした。とってもいい女優さんだ。見直しました、そして惚れました。
マリア・カラスというオペラ歌手がいたのは知っていたけれど、名前を知っているだけで、カラスがどんな人なのかはこの映画を観るまで全く知らなかった。オペラ界の美空ひばりのような存在だったのね(間違っていたらごめんなさい)。

そんなカラス、喉が衰え唄えなくなりパリで隠遁生活を送っている晩年の頃からこの物語りは始まる。声を無くしたばかりか、愛人であった富豪オナシスまでも自分から離れ、ケネディ家の娘と結婚したことも心に大きな傷として残っている。
そんなカラスの元へ映画出演のオファーが舞い込んできた。彼女がかつてレコーディングした「カルメン」を映画化しようという企画。演じるのはもちろんカラス自身だが、唄は全盛期の彼女の録音をかぶせるという。
最初は渋っていたカラスだが、撮影が始まると俄然やる気をみせる。
そして、ついに映画は完成したのだが...。

久々に「サントラ欲しい病」がムクムクと頭をもたげる。それに、この映画を観ながら、一度オペラを観て(聴いて)みたいと思ったし、マリア・カラスが出たこの「カルメン」があるのなら是非観てみたいと痛切に思った。
映画の中ではおそらくファニー・アルダンではなく本物のマリア・カラスの歌声が使われているんだろうなぁ。それでも地の部分のファニー・アルダンのだみ声(失礼!)と歌声にそう違和感を感じなかったのは何故だろう。
大歌手としてのプライドや貫禄はもちろん、凄いプロ意識や完璧主義を目の当たりにする反面、一人の女性としての淋しさや孤独も実にきめ細かく描かれている。その辺りの見せ方も上手いが、演技も凄いよ!
なんか「女ロベルト・ベニーニ」って感じがしました。

オペラに興味を持つ導入編として良く出来ているし、大歌手であり一人の女であるマリア・カラスの物語りとして見てもいい、さらには前人未到の域に達した名人の晩節の物語りとしても見応えはある。
本当は、こんな感想を読まずに今すぐにでも映画館へ駆け込んでほしいぐらい。それだけの値打ちがある作品だと思います。
別に泣けるワケではないけれど、心に染入る何かがある作品。オススメ!
もうしばらく梅田では三番街シネマで上映しているはずです。ボクが観たのは土曜の昼間の会でしたが、ほぼ9割は埋まっている盛況でした(もっとも一番小さいスクリーンやったけどね)。男性は数えるほどで、ほとんどが女性のお客さんでした。

この映画のサントラを買おうか、それともマリア・カラスの「カルメン」のCDを買おうか...
次回は宮沢りえが出ている台湾映画「運転手の恋」をご紹介します。

おしまい。