「ハリウッド★ホンコン」

フルーツチャンの新作


  

一般公開される香港映画は久し振り(?)。テアトル梅田でモーニングとレイトショーのみで上映されている「ハリウッド★ホンコン」。フルーツチャン監督作品。
冒頭のクレジットからいきなりこの映画の世界へ引きずり込まれる。この部分普通は、監督が誰で、製作は誰、主演は...、と文字が流れていくもので正直言って退屈で見ても見なくてもいいようなものだけど、その映画の世界へ誘う滑走路であったり、夢から現実へ戻るまどろみだったりする。ここでは、ブタの皮にスタッフや俳優の名前がのスタンプが次々と押されていく。それがなんとも香港チックでいい。こりゃ、一本獲られました。

「メイド・イン・ホンコン」「花火降る夏」「リトル・チュン」の三部作で香港の中国返還を大袈裟ではなく、庶民レベルの問題として描き、「ドリアン・ドリアン」では香港と大陸との今の関係をスケッチし、サムリーやトニーホーを発掘したフルーツチャン監督。今度はどんなお話しを披露してくれるのか楽しみにしていた。今回はなかなか一筋縄では行かないお話しだ。

旺角(モンコック)から地下鉄の緑色のラインで6つ目の駅。そこは鑽石山(ダイヤモンドヒル)。ライオンロックと呼ばれる岩山の麓にあるベッドタウンで地下鉄のこの駅と直結して「荷里活広場(ハリウッドプラザ)」というショッピングセンターがある。まぁ、観光客にはあまり縁が無い場所のはずだけど、ボクは偶然この2月にここへ行った。
この鑽石山駅の南側の一角に、周囲の超高層マンションが立ち並ぶ再開発区から取り残されたように広がるバラック。ここが大[石勘]村(タイホム・ヴィレッジ)。香港にもこんな場所がまだ残っていたのかと驚く。
鑽石山の超高層マンション群と荷里活広場、そして大[石勘]村との対比。これがそのままこの映画のテーマになっている。

このバラックで焼き豚の製造販売を行う一家と、この彼らのお店にふらふらと現れた上海娘が主人公。
確たるストーリーがある訳ではなく(あるにはあるけど)、幾つものサイドストーリーを交えつつ、このバラックで繰る広げられる日常を点描していく。
上海娘の役にはジョウシュン(周迅)。「小さな中国のお針子」に主演していたお嬢さんですね。この役が「お針子」の続きのように思えたのはボクだけでしょうか? この上海娘の言動は全く持って理解できない。彼女は一体何だったのか?
焼き豚稼業の一家はなかなかいい味出している。いかにも、いかにも。

強く印象に残るのは、男の子がバラックの屋根に上がり旗を振る二回のシーン。そして上海娘が振り返す布の紅さ。また、おとっつあんと高校生の息子がそれぞれブランコを漕ぐシーンですね。

もうこの大[石勘]村は取り壊されてしまい、存在しないらしい。ボクが持っている地図にも「大[石勘]村」という文字はあるけれど「新興路」という表示はすでにない。これも香港。
一度行ってみたかったなぁ。

何かドラマを期待すると裏切られる。でも、なかなか面白く興味深い作品でした。
テアトル梅田での上映は8/1で終了。今後、三宮のアサヒシネマで上映の予定があるようです。香港に興味がある人、香港が好きな人は是非ご覧ください。

おしまい。