「YMCA野球団」

ソンガンホ、ソンガンホ!


  

今回の福岡アジア映画祭の目玉は、この「YMCA野球団」。ボクもこの作品の上映があるから、今年も福岡へ足を運んだ。会場はほぼ満席の盛況だ。

朝鮮半島に初めて野球が紹介される野球黎明期と日韓併合に伴う半島の独立運動を絡めてある。素直に楽しめて、そこそこ感動できるコメディ作品。

お話しを簡単に紹介すると...。 時代はほぼ100年前、ソンガンホ演じるホチャの家は科挙受験のための予備校。しかし、突如科挙そのものが廃止されてしまいする事が無く毎日近所に住む青年と野原でぶらぶらしている。ある日、ホチャが蹴ったボールが塀を越え隣の敷地に入ってしまう。その塀の中で行われていたのは...。
外国人宣教師がキャッチボールをしていた。そこに現れたのがキムヘス演じるジョンニム。ホチャは彼女に一目惚れしてしまう。ジョンニムはホチャに一緒に野球をしないかと声を掛ける。こうして数ヶ月後、YMCA野球団が誕生。YMCA野球団はその頃各地に生まれていた野球チームと対戦し、連戦連勝。
しかし、時代の波とは一見何の関係も無いように見えるYMCA野球団にも、影響が出始める。当時は日韓併合時代、ある日練習場に行ってみると、その広場は日本軍に接収され錬兵場になっていた。日本兵と揉めていると、そこに現われた日本軍将校は日本帰りのYMCAのエース、デヒョンとかつて同級生だった。そこで、初の国際試合が開催される。しかし、デヒョンが本調子ではなく、YMCAは敗れてしまう。
そして翌年、いろいろな思惑が絡まり合い開催されることになった第二戦。ホチャは父の郷里に帰っていた。ジョンニムとデヒョンは日本軍に追われる身だった。しかし、彼らは試合をするためにグランドにやってくる。日本軍チームは占領軍として国家の威信を賭けて闘う。もちろん、YMCAにも半島代表として負けられない。ジョンニムとデヒョンはこの試合が終われば逮捕されてしまう。ホチャは試合の開催を知ったのが試合の前日。自転車や馬を乗り継いでソウルめがけて急ぐのだが間に合いそうも無い。
ホチャは試合に間に合うのか? ジョンニムとデヒョンは逃げられるのか? そして試合の行方は?

キムヘスは風吹ジュンかと思った。この人「ドクター・ポン」にも出ていたらしいけど、全く憶えていなかった。もう少し前に出会っていたら、ガンちゃんだけでなく、ボクも一目惚れしてしまったかもしれないなぁ。
YMCAのメンバーはいずれも役者揃いでとってもいい感じ。ホチャのお父さん、この人もよく出てくる人だねぇ。

それにしても、ソンガンホという人の演技の幅には驚かされる。
この作品、一見コメディタッチに見えるけれど、内容はかなりシリアス。そんな内容なのにきっちり演技を使い分け、暗くなりがちな場面でもガンちゃんの笑顔一つでパッと雰囲気が明るくなる。良くも悪くもガンちゃん一人でこの映画を作り上げている。凄いなぁ。
どう見ても二枚目のハンサムではなく、スタイルだってちょい太め。それなのに、ここ数年のうちにしっかり韓国ナンバー1の俳優だ。「シュリ」の頃はまだまだ脇役だったのになぁ。
「好かれる」と言うよりも「親しまれる」と言う感じか。固い役も柔らかい役もしっかりこなせる。なんともいい役者さんです。

この作品、日本が悪役に回っているだけに日本での一般公開はどうかなぁ。でも、あの「鬼が来た」だって公開されたんだし、可能性が無いワケではないでしょう。
「殺人の追憶」と「YMCA野球団」で「ソンガンホ二本立」公開というのがいいかな。そうなったら、是非ご覧くださいね。まずまずオススメです。

昨年に引き続いてお邪魔した福岡アジア映画祭。手作りの感じがいい映画祭です。スタッフ、ボランティアの皆さん、ご苦労さまでした。来年もいい作品を紹介してくださいね!
ちょっとぼんやりしているうちに、福岡から帰ってきて二週間も過ぎてしまった。そうこうしているうちに、9月に福岡で開催されるアジア・フォーカスの上映作品が決定している。韓国映画では「恋愛小説」、「オアシス」が注目作かな。その他にも大陸や台湾、イランの映画も盛りだくさん。曜日の関係が厳しくてどうなるかわからないけど、昨年は断念しているだけに今年は行きたいなぁ...。

次回は久々の試写会。チャンイーモウ監督の野心作「HERO」を字幕付きで観てきました。ソウルではさっぱりやったこの作品。字幕付きでどう変わるのか? 請ご期待!

おしまい。