「ばかのハコ舟」

全敗する出たとこ勝負


  

この週末に六甲山へ。いつもなら汗をびっしょり流して歩くところをクルマでビュンと登ってしまうのは、なんか妙な気分。最短のアイスロードコースでも1時間半はかかるところを、わずか15分ほどだからびっくりしてしまう。梅雨のこの時期に歩くことはないから、車道沿いに美しくアジサイが咲いているのを見るのは初めて。たまにはクルマもいいな。時間が遅かったのと、朝からの雨の影響か、ハイカーの姿は見かけなかった。思ったほど涼しくはなく、時折ガスが流れるコンディションだったけど、次の休みには早起きして歩いてみようかな。

テアトル梅田でもう一丁。レイトショーを観る。「ばかのハコ舟」。予告編を見て、面白そうだと思った。ほんとにバカな二人が「あかじる」なる健康飲料を売り歩くお話しらしい。
ほとんどメッセージ色を感じさせない、そのままの映画だった。
20代半ばの若い二人が500万もの借金を抱え、この「あかじる」を店頭試飲販売する。しかし、これが売れない。いっこも売れへん。道行く人は、立ち止まってくれないし、珍しく試飲してくれても「不味い!」と言って口を付けただけで突っ返してくる。
おまけに、男の方はもはや売る気力もなくて、テーブルの前で立っているだけ。女の方はまだ元気で一生懸命声を出してお客さんに飲んでもらおうとしている。このアンバランスさがイイねぇ(どこが?)。
二人は東京(画面には東京のシーンに「東住吉区」って映ってたで!)で失敗し、やり直そうと思って、男の故郷へやって来た。でも、頼りになるべき親類縁者、友人知人からは全て総スカンを喰らってしまう。親戚の工場に話しがあると呼ばれて出掛けて行ったら、そこには既にネーム入りの作業ジャンバーが用意されているのには笑ってしまった。
出直すはずの徳島で、出直すどころかにっちもさっちも行かなくなって、身動きの取れなくなった二人は、ほとんど無為の日々を過ごすのだが...。
青春の夢と無知、勇気と無謀さ。この二人の姿を「若さ故」とは言い切れないけど、楽観主義的な行き当たりばったり、出たとこ勝負。これじゃぁ、勝負しても全敗やろなぁ。
彼女の方もどうしてこんな男と何時までも一緒にいるの? まぁ、わからない訳でもないけどね。

カラカラと少し哀しい響きを残しながらも、何故か爆笑してしまう。そんな不思議な魅力を持った一作。
正直ほとんど期待値“0”やっただけにびっくり。そして、面白かった! この監督(山下敦弘)、この男優(山本浩司)、そしてこの女優(小寺智子)には今後も注目したいですね(一番良かったのは、軽トラを運転するスーパーの若大将(山本剛史 )やけどね)。
他には晩年の「男はつらいよ」によく出ていた個性脇役俳優笹野高史が主役の父親役で出ています。
まだやっているのかなぁ。チャンスがあれば是非ご覧いただきたいですね。この晩は20名ほどの入りでした(これもちょっとした驚きでした)。

おしまい。