「欲望の翼」

一分間の友達


  

続けてシネフェスタで拝見したのは「欲望の翼」。
この映画、スター大集合と言った趣でレスリーの他に、アンディラウ、ジャッキーチュン、マギーチャンそしてトニーレオンなど。トニーレオンは最後の最後にちょっと意味不明な出演。続編への布石だったらしいけど、結局この布石はうち捨てられたままとはもったいない。それとも、この映画の続編は形を変えて「ブエノスアイレス」になったのでしょうか(それなら何となく納得できる)。

「4月16日、午後3時1分前。君はボクといた。この事実は否定できない。君とボクは1分間の友達だ。」

「脚のない鳥がいるらしい。ただ飛び続けて疲れたら風に乗って眠る。地上に降りるのは死ぬ時だけだ」

ヨディのわかったような、わからないセリフが印象に残る。
事実を積み上げていくと言うよりも、そこまでが本当にあったことで、どこから幻想のせかいなのか、ぼんやりとしてわからない独特の世界が展開されていく。

ヨディは生まれてすぐに資産家の家に引き取られた。だから大人になった今も仕事はしていない。
ある日、サッカー場の売店でスーと出会う。いつしか二人は付き合い出し、同棲を始める。やがて、スーはヨディを親に紹介したいと言い出すが、束縛を嫌うヨディはこの一言でスーと別れてしまう。
ミミは踊り子。ヨディに会った瞬間から彼女は恋に落ちる。アタマの一部では移り気なヨディを理解できるが、もう片方では否定してしまう。そして、ヨディを追ってフィリピンへまで行く。
スーはヨディを忘れられない。夜毎ヨディの家の前まで行ってしまう。そんなスーの姿に目を留めたのが夜回りの警官・タイド。いつしかタイドはスーに思いをつのらせる。
ヨディの子分サブ。ミミを紹介される。自分には手の届かない女だとは知りながら恋いこがれる。

繰り返すけど、この映画、かっこいいセリフが多すぎる!

「今夜夢で会おう」

「逢えなかったら、俺の所に戻って来いよ」

観ていて「訳がわからない」ということはない。画面からは、若者の全身から溢れるように沸きだしている、漠然とした「何かしなくっちゃ」というあせりや、恋や異性に対する憧れや恐れ、何か達観したような厭世観などが感じられる。そして大切なことは、観ていてそこそこ面白いことだ。
芸術性やメッセージ色一色に走ることなく、エンターテイメントとして成功していることが、この映画が今でも語り継がれる一因でしょうか。

トニーレオンは、天井の低い部屋(船室か?)で身繕いを整えて出掛ける準備をしているワンシーンだけなんだけど、ただそれだけで観ているこちらに「何が起こるの?」と身構えさせて期待させる。流石の役者、演出です。

おしまい。