「上海グランド」

二大スタアの競演!


  

レスリーが不慮の死を遂げてから一月半。
考えようで、これでボクの中にいるレスリーは永遠に若いままで、老醜を晒すこともない。こんな風にプラスに考えよう。それでも淋しいのには変わりはないけれど..。
あちこちで彼の特集上映が組まれている。今回は梅田ガーデンシネマでの追悼上映会へ出かけた。ここでは4作品が上映されるが、ボクは未見の「新上海灘・上海グランド」を観る。

「上海灘」と言えば香港のセントラルに「上海灘」というオールドチャイニーズファッション専門のブティックがある。ここの商品はどれもボクの感覚からすると0の数が一つ二つ多いんだけど、いつもそこそこ賑わっている(地元の方と言うよりも観光客で)。かつてはチャイナシックの服はここでしか買えなかったけれど、ここ1、2年で急にこの手のデザインを扱うお店が増えてきて嬉しい限り。
しかし、SARSが何とかなってくれないと香港にも大陸にもおちおち出掛けられません。しばらくは映画の中で気分に浸るしかないのかなぁ。

さて「上海グランド」。
いかにも香港チックなストーリー。男の友情にロマンス、黒社会、暴力そして奇妙な縁。ウーん何とも言えない味わい。そしてレスリーとアンディラウの二大スタアの競演!

舞台は1930年代の上海。
アンディラウは、なんと便所汲み。しかし、この便所汲み、只者ではないとびっきりかっこいい! アンディラウはストイックな役柄が似合うと思っていたけど、こんなちょっと笑いも取れる芝居もできるんだなぁ。そしてレスリーは台湾の抗日組織の一員。
二人は外灘の一角で偶然に出会い、固い友情で結ばれるようになる。しかし、この二人お互いがそうとは知らないうちに同じ女性を愛してしまう。嗚呼なんという悲劇。
アンディは下っ端の便所汲みからメキメキと頭角を現し、いつしか上海の黒社会の顔役にまで出世する。一方のレスリーは自分と組織を裏切った女の行方を追い続けている。
アンディは上海を牛耳るフィクサーの娘に恋心を抱き、猛烈にアタックする。しかし、彼がしたためた恋文を読み返事をくれていたのは彼女ではなく、実は彼女付きの下女であることを知らない。レスリーは一年前に旧満州(現在の中国東北部)で、脱走中に偶然列車に乗り合わせ自分を助けてくれた令嬢と偶然上海で再会する。その令嬢とは...。

アンディラウとレスリーはいい。それは間違いない。
しかし、ヒロインのティンティンを演じるニンチンがどうもなぁ。この人に二人がそこまで熱を上げるの? もう少し繊細な演技が出来る別の女優さんはいなかったのか? しかもこのニンチン、広東語が駄目なようで広東語のセリフは吹替えではないのか? まるで映画を観ているような(実際、映画なんやけど)ストーリーだけに、キャストは固めて欲しかったなぁ。惜しい。

感動したり、涙を流したりする作品ではないけれど、なかなか面白く楽しめるのは間違いありません。TVの連続ドラマをベースに映画化されたそうなので、まるで圧縮版。だから、ちょっとエピソードが盛りだくさんすぎて未整理な部分があり、映画だけを観たときにまとまりを欠く印象が残ります。
映画は三つのパートから成っており、それぞれアンディ、レスリー、ティンティンのタイトルが付けられている。その三つ目をもっと整理し直すだけで随分仕上がりは違うと思う。いっそのこと彼女は写真や後ろ姿だけにして姿を現さず、レスリーとアンディラウだけに絞ったら面白かったのに。

軽い気持ちでご覧になって、二大スタアの姿に酔いしれるのもいいんじゃないですか。

さて、今後は動物園前のシネフェスタ、宝塚のシネピピア、神戸湊川のパルシネマしんこうえんなどでレスリーの追悼上映会が開催されます。ボクは「君さえいれば・金枝玉葉」「さらば我が愛・覇王別姫」などがオススメ。シネフェスタの「欲望の翼」「金玉満堂」は観る予定です。
この日はレイトショウにもかかわらず、8割方座席が埋まるお客さん。男はボクを含めて3名だけ。レスリーもさぞかしお喜びのことだったでしょうね。

おしまい。

<追記>書き漏らしましたが、ラスト近くでアンディを襲う抗日組織のメンバー。この人韓国のスター、チョンウソンなんですね。「武士/ムサ」(近日公開予定)や「ユリョン」に出ていた二枚目なお方です。