「キープ・クール」

何だかなぁ...


  

この日は珍しくカッチンと一緒に映画を観た。
観たのは、動物園前シネフェスタ4で「キープ・クール」。97年の作品。
どうして今ごろこの映画が日本で公開されるのかは、監督がチャンイーモウで主演がチェンウェンだからだと思う。そしてこの映画、この二点を除いてしまうと、さして魅力の無い作品なのだ。

現代の北京が舞台。まさにごっつい勢いで変貌を遂げようとしている「陽性の北京」が描かれている(「陰性の北京」の代表作とは、お正月に観たニンイン監督の北京三部作となるのでしょうか?)。
97年と言えば、天安門事件もすっかり一段落して落ち着きを取り戻し、外資の流入も順調に復活し始めた頃。北京に住む人たちにも笑顔が戻ってきています。
まさにチャンイーモウもこんな作品も作るんだ、って感じの映画。異様にテンポが悪く(特に後半)、歯切れも悪い。
ハンドカメラが多用されていて、観ていてかなり疲れる(ドグマか?)。後半の主要部分であるレストランでは常に窓越しに陽が差し込んで眩しい、それだけじゃなくて、ストーリーもかなり疲れる筋立てになっているのだ。

主人公のチァンウェンは惚れていた女に振られてしまう。どうやら新しい男が出来たから「乗り換え」られてしまったのだ。だが、諦めきれない彼はストーカーよろしく、この女に付きまとい、しまいには女が住む高層アパートの下から拡声器を使って愛を囁く。これはなかなか滑稽なシーン、しかもこの場面には「俳優・チャンイーモウ」も登場! 
上手く行ったかなと思わせといて、女からは水を浴びせられる。
そうこうしているうちに、チァンウェンはかなり要領が悪くなおかつ「間が悪い」男だと言うことがわかってくる。彼の間の悪さは天下一品だ。
ある日、チアンウェンが道端で佇んでいるところに、高級外車(ベンツ)が横付けされ、スモークされた運転席のパワーウィンドウが下がる。そのとたん、チアンウェンはそのクルマから降りてきた男たちからボコボコにされてしまう。彼は通りかかったオヤジからカバンを取り上げ、そのカバンを振り回して反撃を試みるが、却って一層叩きのめされるハメに逢うだけ。気を失った男は病院に担ぎ込まれてしまう...。
彼を襲った男こそ、彼から彼女を奪った男だった。物語りは、チァンウェンがこの男に如何に復讐を試みるかをここから延々と語り始めるのだが、ここでもう一人の男が登場する。
それは、この騒ぎに巻き込まれた哀れなオヤジ(リーパオティエン、「菊豆」で天青役でしたね)。彼はチァンウェンに買ったばかりのノートパソコンが入ったカバンを奪われ、振り回された挙句に、パソコンを破壊されてしまった可哀想な人。
彼の登場によって、物語りは単なる愛憎劇から、予想だにしなかった妙な方向へ進み始める。

とにかく、思い込んだら一直線、ある意味(ボクの知っている)中国的な男の代表格を演じるチァンウェンが何とも言えない。愛にも、復讐にも一途でしかもしぶとい。お金じゃなく面子と言うところも中国チックでいい。そして持って生まれた間の悪さが笑いを誘う。
しかしこの男、働いているように見えないけど、どこからお金が湧いてくるんでしょうね?

ドタバタでありながらもどこか芯が通っていれば「さすがチャンイーモウ」となるのでしょうが、芯が通っている訳でもなく、最後までドタバタで終わってしまう。

「なんだかなぁ...」
カッチンに至っては、途中で居眠りしてました!

興味があればどうぞ。
もうしばらくはシネフェスタで上映しているはずですょ。
公開三日目の月曜、メンズデーにも関わらず、お客さんはボクたちを含めて10名いたかどうか。入りとしては、いつものシネフェスタなんだけど、やっぱり淋しい。
ほんまのチョイ役だけどグォヨウ(葛優)が二度出てきます。また後日「至福のとき」の主役を演じるチャオベンシャンも顔を出していますよ。
今となっては懐かしい「ミンディ」と呼ばれていた黄色いタクシーも活躍(今では廃止されている)。北京の庶民も改革開放がまだそんなに定着していない頃で、まだまだ文革時代をどこかに引きずっているような姿が印象的。
チァンウェンの彼女がミニスカートで自転車に乗るのも今では考えられない、当時ならではの面白さでしょうか。この人、ある意味色気があって、ある意味全く色気を感じさせないところも、ボクの知っている中国的な若い女性の代表格を上手く(自然に?)演じています。

来週(4/26)からは同じ劇場で、大陸の映画、グォヨウ(葛優)主演の「ハッピー・フューネラル」も公開されるようです。今後も「ミッシング・ガン」(チァンウェン主演)、「北京ヴァイオリン」と大陸の映画、「ダブル・ヴィジョン」、「ミレニアム・マンボ」(スーチー主演)の台湾映画と中華圏の作品が続々とかかりますので、今後ともシネフェスタからは目が離せないですね。

おしまい。